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トピックス

~鑑賞後記~ モーツァルトの魅力たっぷり、ノリントン・マジック

オーチャードホールの舞台上に、あまり見慣れない風景が広がっていた。

左右に分かれたヴァイオリン・セクション。その後ろには、平台が置かれて、

そこに木 管楽器が位置する。

コントラバスも2本ずつ、左右に分かれ、中央奥にはティンパニが鎮座する。

小さな編成のNHK交響楽団だが、ノリントンがいったん指揮を始めると

豊かな響きが客席に届いてくる。

これこそ、ノリントン・マジック、なのかもしれない、、、と

モーツァルトの傑作のひとつ「パリ交響曲」を聴きながら

心の中で呟いている自分がいた。

N響とのベートーヴェン・ツィクルスで、また新たな魅力をN響から引き出した

ノリントン。 ここオーチャードホール定期では、オール・モーツァルト・

プログラムを聴かせてくれた。N響の柔らかな響きに、モーツァルトはとてもよく

フィットする。それをノリントンもよく分かっているようだ。

鋭角的な音楽作りは、あえてせずに、モーツァルトの音楽の動いてい行く力を

利用しながら、時に、意外なタメを作ったりと、なかなか曲者な表現だ。

 

もうひとつの興味は、若手ヴァイオリン奏者、木嶋真優だった。

ザハール・ブロンの薫陶を長くうけ、その実力は業界ではよく知られていた。

いま、ちょうど花咲く時期迎えている彼女の、活き活きとした演奏が協奏曲の

醍醐味を教えてくれる。

ノリントンの指示で、あえてヴィヴラートを減らした奏法に徹していたが、

左手の音程がとてもぴったり決まっているので、音楽の表情が崩れない。

新たな彼女の実力を知る、そんな「トルコ風」だった。

 

そして後半には「プラハ」。あの「フィガロの結婚」を全面的に受け入れ、

「ドン・ジョヴァンニ」を初演した町。

「プラハ」にはモーツァルトの様々な思い入れが感じられるのだが、あえて、

そうした部分には目を向けず、音楽そのものの形を浮き彫りにするノリントン。

時に、ティンパニを強調するように、奏者のほうに向かって行くと思えば、

舞台から客席を振り返って、「どう?」というように微笑んでみせる。

その仕種に、すっかりやられてしまうのだった。

アンコールには、予想通り「フィガロの結婚」序曲。楽しいさのなかにこそ、

モーツァ ルトの音楽の魅力がある、そんな風にノリントンが語っているような、

本当に楽しいオーチャード定期だった。

片桐卓也(音楽ライター)

 

2013年10月14日 15:30開演

指揮:ロジャー・ノリントン  ヴァイオリン:木嶋真優

モーツァルト:交響曲第31番ニ長調K. 297「パリ」
モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲第5番イ長調K. 219「トルコ風」
モーツァルト:交響曲第38番ニ長調K. 504 「プラハ」

アンコール モーツァルト:歌劇「ファガロの結婚」より 序曲