中核都市ポンペイの繁栄
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ヴェスヴィオ山の大噴火があった紀元1世紀の頃、カンパニア地方の中核都市ポンペイの人口は一万人を超え、劇場や円形競技場、公衆浴場などが整備され、その繁栄を謳歌していた。しかし西暦79年8月24日午後1時から始まった噴火は翌朝まで続き、建物は破壊され、街からはあらゆる命が消え去った。ポンペイ市内の十六ヵ所で発見された壁画や彫刻、宝飾品など約二百点は、この都市の繁栄を物語るとともに、噴火の悲劇を生々しく伝えるものでもある。
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ジュエリーの中でも「ヘビ形の腕輪」と呼ばれる大型の純金製腕輪は、重さ610gを超える豪華なもの。双頭のヘビがくわえているのは月の女神セレネが浮き彫りになったメダルで、象徴的な意味合いが込められたものであることがわかる。また他のアクセサリーでは、94枚のキヅタの葉をかたどった金のネックレスや、エメラルドと真珠と金のネックレスなどといった華麗なものが多数出品されている。「ヘビ形の腕輪」が見つかった家の庭からは、詩人エウフォリオンを細密画風に描いた壁画も見つかっており、本展に出品されているその断片からは、このような主題を日常に取り入れる生活の質の高さが推測される。
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ポンペイのコーナーは市内の建物や道を単位として展示がなされている。その中には庶民的な生活を偲ばせる「サルウィウスの居酒屋」、敷地が1800uもあるポンペイ最大の邸宅の一つ「百年祭の家」、郊外に建ち秘儀を表す大きな壁画があった「秘儀荘」など、特徴的な名称のものも多い。これらの家々からの発掘物は、本展では宝飾品と美術品が中心に展開されている。例えば「メナンドロスの家」(同名のギリシア詩人の壁画があることからの命名)は、ポンペイの都市部で最も魅力的な家のひとつとされ、ここから出土した大理石のアポロ像は、アルカイック風を模した当時流行のヘレニズム彫刻の秀作となっている。なおこの家の裕福な所有者は、皇帝ネロの二番目の妻の親戚にあたる人物であったことが分かっている。 |