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現代スペイン・リアリズムの巨匠 アントニオ・ロペス展 | Bunkamuraザ・ミュージアム | 2013/4/27(土)-6/16(日)

アントニオ・ロペスとは

《グラン・ビア》を制作中のロペス 1978年
© Fundación Colección Thyssen-Bornemisza, Unidad Móvil and María López archive

今日のスペイン美術を代表する作家アントニオ・ロペス(1936-)は、その卓越した技術と観察力によってリアリズムを追求しながら独自の世界を描き出します。10年をかけてもなお手を入れ続けるほど制作期間の長い作家として知られるロペスの作品はリアリズムでありながら、物の形象をなぞることに終始することなく、描かれた対象は時間性をも感じさせます。刻々と移り変わる人の姿や都市風景が、作品の中でも同じく生命を宿し変化を重ねているかのような錯覚さえも引き起こします。
 ロペスは「流行に興味はない。スペイン美術は昔から自分の眼と手の仕事だった。大切なのは感動であり、その存在感。だから写真とは無縁だ」と語ります。その態度は単なるリアリズムをはるかに超え、対象となる事物の本質にまで迫ります。
 また、マルメロを描く作家自身の姿を撮った映画『マルメロの陽光』(監督:ビクトル・エリセ 1992年制作)は日本でも公開され話題を呼びました。
 本展では初期の美術学校時代の作品から近作まで、油彩・素描・彫刻の各ジャンルから代表作約65点を厳選して紹介します。マドリードの都市風景はもちろん、家族の肖像、静物、室内、人体に至るまで、ロペスの長年にわたるテーマを網羅する日本での初めての個展となります。

アトリエでのロペス 1992年
© Fundación Colección Thyssen-Bornemisza, Photo: Antonio Blanco Otero

スペインのラ・マンチャ地方の町トメリョソに生まれ、幼少期より叔父アントニオ・ロペス・トーレスから絵画を学ぶ。現在においてもロペスは最も影響を受けた画家として、スペイン・バロック絵画の巨匠ベラスケスとともに叔父の名をあげている。1950年から55年までマドリードの王立サン・フェルナンド美術アカデミーで絵画を学び、後にロペスの妻となるマリア・モレーノをはじめとする同校の芸術家たちとグループを形成し切磋琢磨していく。早くから評価され数多くの個展が開催されてきたが、近年では1993年にマドリードの国立ソフィア王妃芸術センター、2008年にはボストン美術館で、さらに2011-12年には、スペイン国内2か所の美術館(ティッセン・ボルネミッサ美術館、ビルバオ美術館)で、大規模な個展を開催し、世界的に高い評価を得ている。1992年には、彼の制作過程を撮影した映画『マルメロの陽光』が映画監督ビクトル・エリセによって制作された。

世界的に評価されている現代スペイン美術界の巨匠で、過去に映画でも紹介された作家でありながら、日本では初めての個展。

リアリズムでありながら、シュルレアリスムの影響も見られる独自の世界。その作品は、観る者に時間の静止と神秘性を感じさせる。