2014.12.01 UP

プロダクションノート公開!

パネルとパペッターとマニピュレイター。
ラルビとダンサー陣が生み出す3種類のムーブメントとは。

界 一忙しい振付家」のラルビが、11月5日にはすでに来日し、翌6日から稽古を始めていると聞き、覗きに出かけた。約10日間の予定で行われるこの「プレ稽古」は、『プルートゥ PLUTO』の最重要ポイントである、さまざまな種類のロボットの操作と、複雑に形状を変えて動く舞台装置。この双方の担い手となるダンサーたちの、ムー ブメントに重点を置いたもの。8月のオーディションで選ばれた5人を含むダンサー8人に、俳優陣から森山未來が参加して行われていた。

古場には、一辺が1メートル前後、厚さ約20cmの白い台形のパネルが7個あり、ダンサーの面々がそれを数個ずつ組み合わせて、テーブルにしたり、壁にしたり、飛び石のようにバラして置いたりと、多様な形態に変容させている。7個のパネルは、それぞれ形が異なっているのだが、パズルのようにはめ込んでゆくと長方形に納まり、7コマに仕切られた漫画の1ページに見えたりする。「7」は、命を狙われるア トムなど7体の最強ロボットの数とも、呼応しているらしい。

うひとつの重要なダンサー陣の役割が、ロボット(=人形)遣いだ。これにはロボットの種類の違い により、「パペッター」と「マニピュレイター」という、2種の呼称が使われている。パペッターは、その名の通り人形遣いで、体長60センチほどのアリから、約4メートルにおよぶプルートゥまで、造形された人形を操作する者のこと。そして「マニピュレイター」は、アトムやゲジヒトなど、俳優が演じる高性能 ロボットに、文楽の人形遣いのように3人1組で寄り添う存在のことだ。彼らは、糸操り人形の糸を引くしぐさでロボット(俳優)を操る動きを見せるだけでなく、ロボットに、向けるべき視線の場所を指示したり、感情の表出の様子を手振りで表現したりと、人工知能による指示系統をビジュアル化したかのような動きを見せる。3人が1人の俳優に影のようにまとわりついて、その動作を微細に誘導してゆく様子は、まさしくマニピュレイター(操縦者/陰で巧みに操る者)。 非常に細かく複雑で、意味を伴う振付になっていて、ダンスとして見ても、ユニークなおもしろさに満ちている。さらに、操作される側のロボット・アトム役の森山の動きがまた、なめらかでいながら、ロボットならではの直線的な流れをほんのわずかだけ残す絶妙さで、まさに「人間と見まごうような高性能ロボット」 そのもの。思わず、目が釘付けになった。

ネルとパペッターとマニピュレイター。なごやかなムードの中、ラルビとダンサー陣による3種類のムーブメントが、サクサクと展開してゆく。目をまん丸くして見入ってしまったけれど、今日観た動きが、必ずしも本番の舞台に採用されるとは限らない。「まだ11月だから、いろいろ試してみよう」と、ラルビも終始、余裕の微笑み。『プルートゥ PLUTO』を舞台化するって、こういうことなのか――。少しだけ、彼らの頭の中が見えてきた気がした。

演劇ジャーナリスト 伊達なつめ