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渋谷・コクーン歌舞伎 第十三弾 天日坊

原作:河竹黙阿弥 「五十三次天日坊」 演出・美術:串田和美 脚本:宮藤官九郎

2012年6月15日(日)~7月7日(土) Bunkamuraシアターコクーン

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製作発表レポート

歌舞伎は自由だ! コクーン歌舞伎の新しい挑戦『天日坊』

 コクーン歌舞伎第十三弾『天日坊』の製作発表が先日、都内のホテルで行われた。出席者は串田和美(演出・美術)、宮藤官九郎(脚本)、そして出演者の中村勘九郎、中村獅童、中村七之助。宮藤はコクーン歌舞伎には初登場で、串田との仕事もこれが初となる。

串田「世界の古典芸能の中で、歌舞伎は今現在、生きて変化し続けている珍しいケースだと思う。いつも感心させられ、発見がまだまだあります。現代劇より歌舞伎のほうがぶっ飛んでるなあと思うこともたくさんあって、もっともっと自由なんだと思う。そのことは、宮藤さんの『大江戸りびんぐでっど』を見て、改めて思いました。歌舞伎じゃないと言う人もいましたが、今回、これは歌舞伎なのか?というような議論が巻き起こるような、挑戦をしていきたいですね」

宮藤「コクーン歌舞伎は、一回目から見ているのですが、毎回びっくりする仕掛けがあって。ラップを取り入れたり、現代版をやったり。だから『大江戸りびんぐでっど』を串田さんに褒めて頂いたのは非常に嬉しかったです。今回は黙阿弥の原作が長くて呆然としましたが、145年も上演されていないということは、原作を見た人が誰もいないわけだから、良いところは僕のアレンジという事にして(笑)逆にダメな部分は”そこは原作通りです”と言い切ろうと思います。」

勘九郎「膨大な原作を宮藤さんが、よくまとめてくださったと思います。黙阿弥の七五調の台詞が、宮藤さんの現代風のかっこいい台詞になっています。平成中村座の楽屋で台本を大笑いしながら読んでいたら、父が『俺は出ないけど、これ大丈夫か?』と言ってました(笑)。凄く面白いホンですが、持っているものを全部出しきってやらないと、ダメだなと思っています」

獅童「コクーン歌舞伎は『夏祭浪花鑑』以来、9年ぶりの出演です。ゼロから作る現場にいつも感動していました。エネルギーの凄さと熱さは本当に驚かされます。勘三郎さんも、ほんとに怖かったし(笑)。今回は、僕らの世代で引っ張っていかないといけません。全力で新しいコクーン歌舞伎に挑んでいきたいと思います」

七之助「コクーン歌舞伎では初めての若い世代で、とても楽しみにしています。16歳で初めてコクーン歌舞伎に出させてもらった時は、まだほとんど舞台経験がなくて、何もできなかった僕を、串田さんはそれこそ手取り足取りして教えてくださいました。宮藤さんとは映画『真夜中の弥次さん喜多さん』で、お世話になりました。二人の育ての親と一緒に、舞台をできる喜びをかみしめながら、一生懸命つとめたいです」

 最後に天日坊を勤める勘九郎は「コクーン歌舞伎は父が身を削るようにして懸命に作って来たものです。その精神を引き継いでいきたいと思います」と決意を語った。

文:沢美也子(演劇ライター)