おうちでも!Bunkamuraドゥマゴパリ祭2020

フランスの国民的写真家、ドアノーが捉えたパリの人々の「音楽」と「生きる喜び」

2020.08.03 UP

フランスでは「Fête nationale française(フランス国民祭)」と呼ばれるパリ祭。その名のとおりフランス共和国の成立を記念した国民の休日ですが、この日は華やいだ街の雰囲気を味わうため、多くの人が街へ繰り出します。
パリ祭は古くから印象派をはじめ多くの画家や写真家たちによって繰り返し題材にされてきました。ロベール・ドアノー(1912-1994)も、街の中で思い思いにお祭りを楽しむ人々の姿を取り上げた写真家のひとりです。


《サン・ジャン・ド・リュズのファンファーレ、1952年7月14日》
1952年

 


《パリ祭のラストワルツ》
1949年


《パリ祭のジャック・プレヴェール、ナント通り》
1955年

街頭でファンファーレを演奏する楽団、手を取り合ってダンスする人々。撮影されるほんの数年前までフランスがドイツ軍に占領された歴史を思えば、パリ祭を心から楽しんでいる人々の姿が、私たちの目にはよりいっそう印象的に映ります。
1912年にパリ郊外の町ジャンティイで生まれ育ったドアノーは、郊外の住人としてパリ周辺でたくましく生きる人々を温かな視線で撮影し続けました。


《音楽好きの肉屋》 1953年

肉屋、アコーディオン弾き、子ども、日雇い労働者、カップル…、ドアノーの作品には、日々の暮らしを実直に生きるパリの庶民が数多く映し出されています。
その一方で、ドアノーは詩人ブレーズ・サンドラールに見いだされ、37歳の時に協働して初の写真集を出版するなど、文化人と交流を深めながらキャリアを形成していきました。特にシャンソン「枯葉」の作詞家としても有名なジャック・プレヴェールと知己を得たことは、ドアノーが当時パリで活躍する音楽家たちと知り合う大きなきっかけになります。ドアノーは1950年代ごろから晩年の80年代に至るまで、ジュリエット・グレコ、モーリス・シュヴァリエ、エディット・ピアフら、数々のエンターテイナーと交流を重ね、カメラにおさめてきました。


《ポン・ド・クリメのジャック・プレヴェール》
1955年

 


《サンジェルマン・デ・プレのジュリエット・グレコ》
1947年

ドアノーは愛機ローライフレックスやライカで、老いも若きも、音楽とともに生きる人々を飾り気のない姿で生き生きと捉えました。2021年2月、パリのあらゆる音楽シーンを撮影し続けたドアノーの足跡を紹介する展覧会が幕を開けます。約200点の作品からあふれでるドアノーの音楽的感覚とヒューマニズムをぜひご堪能ください。

Bunkamuraザ・ミュージアム 学芸員
吉川貴子

 

 

【展覧会情報】


《流しのピエレット・ドリオン》 1953年

「写真家ドアノー/音楽/パリ」
2021年2月5日(金)~3月31日(水)予定
Bunkamuraザ・ミュージアム
主催:Bunkamura、読売新聞社
企画協力:コンタクト

フランスの国民的写真家ロベール・ドアノー(1912-1994)は、パリを舞台に多くの傑作を生みだし、世界で最も愛され続けている写真家のひとりです。本展は、パリの街角にあふれるシャンソンやジャズなど様々な音楽シーンを題材に1950年代から90年代にかけて撮影された、ドアノー独自の音楽的感覚に富んだ作品約200点で構成されます。2018年末から2019年春にかけて、フランス・パリ19区にある“フィルハーモニー・ド・パリ”内の音楽博物館で開催され大好評を博した展覧会を基に、日本向けに再構成した巡回展がやってきます。

展覧会詳細はこちら

作品すべて:©Atelier Robert Doisneau/Contact