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2026.10.29 UP
子どもたちに、本物の音楽との出会いを ファミリーコンサートに込めた思い
0歳から入場できる、『室内楽フェスティバル AGIO』のファミリーコンサート。小さな子どもたちにも一流の演奏家による音楽を届けたいという思いから生まれたこのコンサートについて、『AGIO』のフェスティバル・ディレクターであり、自身も2児の父親である横溝耕一さんにお話を伺いました。
「初めて目にするものや口にするものは、たとえ記憶に残らなくても、潜在的にどこかに残ると信じているんです。生まれて初めて聴く音楽は、できるだけいいものであってほしいと思いますが、0歳の子どもを本格的なクラシックコンサートに連れて行くことは、なかなか難しいものです。それなら、自分たちがその機会をつくろうと思ったんです」
そんな横溝さんの思いから始まったファミリーコンサート。
「僕たちが場を用意して、自信を持ってすごいプレイヤーを揃える。子ども向けだからといって手を抜くことはしないし、実際に耳に、五感に届けるものにはプライドを持って取り組んでいます」
小さな子どもたちが飽きずに楽しめるよう、プログラムにはさまざまな工夫を凝らしながらも、演奏そのものについては決して妥協しません。その場で何かを感じ取る子もいれば、まだ音楽の面白さが分からない子もいるでしょう。それでも、その体験がいつか心の中で芽を出すことがあるかもしれません。
横溝さん自身にも、忘れられない音楽との出会いがあります。
「僕も昔、母親に連れて行かれた演奏会は嫌で嫌でしょうがなかったんですよ(笑)。面倒だし、眠くなるし。でも、小学校1年生くらいの頃に聴いたピンカス・ズーカーマンのブラームスのヴァイオリン・ソナタだけは、今でも覚えています。音が目の前にあって、『なんだこれは!』って衝撃を受けたんです」
幼い頃の鮮烈な体験は、大人になった今も横溝さんの心に残っています。
「僕らがそういう音の出し方をするわけじゃないけれど、そういう忘れられない経験って、きっとあると思うんですよね」

また、ファミリーコンサートには、子どもたちだけでなく、子育て中のお父さんやお母さんにも音楽を楽しんでほしいという願いが込められています。子どもが生まれてから、演奏会に足を運ぶ機会が減ってしまった方も少なくないでしょう。小さな子どもを連れての外出には、泣き出してしまったらどうしようという不安もつきものですが、ファミリーコンサートでは途中入退場が可能で、子どもが落ち着いてから再び客席に戻ることもできます。
「本当は子どもが泣いていても、その場に留まってほしいなと思うんです。でも僕も親なので、周りが気になっていたたまれなくなる気持ちは分かります。短い時間でも、生演奏に触れるきっかけになればと思っています」
そんな親御さんの気持ちにも寄り添いながら、これからもこの取り組みを続けていきたいと考えています。
今回の演奏曲は、プロコフィエフ作曲の「ピーターと狼」。物語と音楽が一体となった作品で、子どもたちにも親しみやすいことが選曲の理由です。2023年に開催した第1回の『AGIO』でも取り上げられ、本来はオーケストラのために書かれた曲を、室内楽のピアノ四重奏版に編曲して演奏しました。その後2年間はサン=サーンス作曲の「動物の謝肉祭」を演奏しましたが、今回は再び「ピーターと狼」が登場します。
楽しみは音楽だけではありません。舞台に立つ演奏家たちの姿も、子どもたちにとっては特別なものに映るはずです。
「衣装を着て舞台に立っている人って、それだけでもちょっと特別に見えるじゃないですか。松田華音さんのドレス姿なんかは、きっとキラキラして見えると思うんですよ」
過去の公演では、ドレス姿の演奏家を見て「プリンセスみたい!」と喜ぶ子どももいたそうです。
演奏時間は、小学生くらいの子どもの集中力も考えて約45分。音楽に耳を傾けたり、物語を楽しんだり、演奏家の姿に目を輝かせたり。楽しみ方は人それぞれです。
子どもたちにとっての初めての音楽体験が、いつか忘れられない思い出になるかもしれない。そして親御さんにとっても、久しぶりに生演奏を楽しむひとときになるかもしれません。そんな願いが、このファミリーコンサートには込められています。芸術の秋、家族みんなで、本格的なクラシック音楽に触れてみてはいかがでしょうか。

《ファミリーコンサート》
2026年11月15日(日)
10:30開演(10:00開場)
※上演時間:約45分(休憩なし、途中入退場可能)
出演:郷古廉(ヴァイオリン)、横溝耕一(ヴィオラ)、宮田大(チェロ)、松田華音(ピアノ)、田添菜穂子(ナレーション)
曲目:S.プロコフィエフ:ピーターと狼(ピアノ四重奏版)
料金:1,500円(税込)