2023.01.19 UP
期待高まる待望の日本初演!R.シュトラウス『平和の日』を解説
いよいよR.シュトラウスの隠れた名作『平和の日』が東京二期会コンチェルタンテ・シリーズに登場!宗教戦争であるドイツ三十年戦争の最後の日を題材にしたこのオペラ、奇しくも今の自制を示唆する内容と言えるでしょう。この作品をイラストとともにご紹介します。
疲れ果てた民衆と司令官の強い覚悟
時は1648年10月24日夜明け、舞台は三十年戦争で包囲された街の要塞。長期にわたって包囲されている要塞の兵士は、皆疲れ切っている。市長らからの「降伏して開城するしかない」という声が高まるなか、司令官は皇帝からの「要塞を死守せよ」という親書を掲げ断固拒否するが、民衆も怒りを爆発させる。市民が去ると兵士たちは、敗北が濃厚も、要塞の爆破と、自決も辞さない司令官への忠誠を誓う。
司令官とマリアの夫婦の愛のシーン
場面変わって、司令官と妻マリアとのシーン。マリアが要塞を訪れると、尋常ではない様子に動揺する。「結婚式以来、あなたは笑っていない。私は戦争と結婚したのね」と歌う。要塞を爆破して自決する意志を伝えられるとマリアは「一緒に逃げましょう」と言うが、司令官は「皇帝に誓った以上それはできない。最後まで戦う」と答える。マリアは司令官と最後まで一緒にいることを約束、運命を共にすると決めた二人は、抱き合う。
「平和の鐘」が鳴るも罠だと疑心暗鬼の司令官
再び街の要塞。大砲の音が聞こえ、ホルシュタイン人の包囲軍からの総攻撃に身構えるが、敵は一向に攻撃を仕掛けては来ない。そこに教会の鐘が一斉に鳴り響く。マリアは「平和の鐘だ」だと直感的に思う。また兵隊から「敵が白旗をあげてやってくる」という知らせを受けるが、司令官は罠だと警戒し「要塞の扉を閉める」よう命じる。そして「最後の一兵となっても戦う」と主張する。
ついに平和が訪れ、人々は歓喜に包まれる
要塞の城門は開かれ、街では敵兵と市民たちが抱き合う。市長は「平和条約が結ばれ、戦争は終結した」と宣言する。敵の包囲軍の司令官も「戦争の終わり」を告げに来る。まだにわかに信じられない司令官。しかしマリアや市民は平和を求めて願い歌う。司令官はついに剣を捨て敵の司令官と抱き合う。人々は長い苦しみの末、平和が来たと喜び、平和の歌で幕が閉じる。
二期会通信「OPERA」Vol.332 2022年12月号より
イラスト:小迎裕美子
記事提供:公益財団法人東京二期会
http://www.nikikai.net/enjoy/vol332_04.html