青島広志のバレエ音楽ってステキ!夏休みスペシャルコンサート2017

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2018.07.17 UP

公演の見どころに迫る! 宮尾俊太郎 スペシャルインタビュー


 宮尾俊太郎が舞台に出てくると、まるで本物の王子様が目の前にいるかのような錯覚を覚える。日本人離れした長い四肢、透き通る白い肌になびく長い髪。バレエを踊るために生まれてきたかのような容姿の持ち主で2004年 Kバレエ カンパニーに入団以来、バレエ界からは常に注目の存在だ。恵まれた容姿に加え丁寧な役づくりと表現力で大役のチャンスを次々と生かし、2015年12月には最高位のプリンシパルに昇格した。
その活躍はバレエ界に留まらない。バレエの第一線で磨かれたエレガントな魅力を求め、テレビやミュージカルなどでもオファーが絶えない。6月には『ウーマン・オブ・ザ・イヤー』で亡命中の有名バレエダンサーの役を演じたことが記憶に新しい。歌は初挑戦だったというが堂々とした役づくりで、また新たな一面をみせた。

 Kバレエ公演に、自らが率いるグループ Ballet Gents(バレエジェンツ)の公演にと、様々な舞台で活躍する宮尾だが、もしかすると、この夏の『青島広志のバレエ音楽ってステキ!』公演は宮尾のマルチな才能が一番楽しめる舞台かもしれない。この公演で宮尾は青島広志の助手としてトークで進行を務めるほか、自身も踊り、さらには自ら振り付けた作品も披露するのだ。
リピーターも多い本公演の宮尾俊太郎が語る魅力とは?



― 2013年に始めたこの公演も毎年好評を博し、今年で6回目を迎えます。この公演のみどころは?

宮尾:なんといってもバレエと音楽、どちらもしっかり楽しめるということですね。普段はどうしてもどちらかがメインで公演が行われますから、それぞれの良さを同時に満喫いただける機会というのは貴重だと思います。そしてなんといっても青島先生のお話が素晴らしい! 基本的な知識をおもしろい切り口で説明することにかけて右に出る人はいないかと。先生だからこそ許される際どい話題にも注目です(笑) バレエについて皆さんが聞いてみたいけどなかなか聞くのははばかられること、例えば、知りたいけどやっぱり聞きにくい音楽やバレエにまつわるお金事情、嫉妬渦巻く世界なのか、などに青島先生はズバッと切り込んでしまう(笑) 大人の方にも楽しんでいただける理由ですね。


― バレエの出演者も演目も毎年豪華ですよね?

宮尾:Kバレエ カンパニーの本公演で主役を任されているようなダンサーがたくさん出演しますし、作品も大作バレエの名場面ばかりです。トークではバレエ部分については僕が基本の説明をしますが、みなさんが知りたいと思うことを楽しく話すということを心がけています。まじめなことをまじめに話してはおもしろくありませんよね? まじめなことを笑いながら聞けるのがこの公演なんです。バレエ音楽をあえて演奏だけで上演する曲もあるのですが、音楽だけで楽しむことでバレエファンの方にとっても新たな発見があると思います。僕もいつも踊っている曲を、このコンサートで音楽だけの生演奏で聞き、これまで気づかなかった細かな楽器の音等が聞こえたりと毎回勉強になっているんです。

― 宮尾さんの踊りも公演の見どころですが、今年は山本康介さん振付の『タイスの瞑想曲』を踊られます。

宮尾:この作品は、今年2月のKバレエ公演で初演された作品です。曲の題名だけではピンとこないかもしれませんが、メロディを聞いたら「あ、この曲か!」となることが多い有名な曲。織姫と彦星というイメージが元にできた作品なんですよ。振付の山本さんは、海外でのキャリアが長い方なので宇宙や自然の偉大さといった外国的な思想が反映された素敵な作品です。一緒に踊るのは日本を代表するプリマ 荒井祐子さん。キャリアを積み上げたからこそ出せる深みをお見せしたいと思います。
公演初日にはホールに併設する「なかのZERO プラネタリウム」で特別上映が開催されます。公演の前後でご覧いただけますので、星空を観て更にイメージを膨らませてみるのもオススメです。(プラネタリウム開催日・料金などの詳細はこちら

Ballet Gentsの作品『こうもり』は宮尾さんの振付ですね?

宮尾:ありがたいことに振付をする機会が増えていますが、振り付けるときはダンサーが発信しているものを敏感にキャッチして、個性を動きに反映しダンサーの良さが出るようにしたいと思っています。『こうもり』は“序曲”ですから、その後に展開される物語の断片が詰まっているカラフルな曲。そこにジェンツメンバーそれぞれの個性がうまく合っていると思います。

― 今年の上演作品で宮尾さんのおすすめを教えてください。

宮尾:バレエを初めて観る方には『くるみ割り人形』の“金平糖の踊り”ですね。テレビなどでも良く使用される曲ですし、チェレスタという楽器の繊細な音に魅了されるはずですよ。このチェレスタという楽器は、作曲された当時は最新の楽器で、チャイコフスキーは他の作曲家に真似されないよう上演直前まで楽譜を隠していたといわれているんです。
バレエファンの方には…、やはり自分が踊る『タイスの瞑想曲』に注目いただければ(笑)!この曲はアシュトンの振付が有名で、自分もその印象が強かったのですが、山本さんの振付を踊ったら、この曲にはこの振付が一番しっくりくる!と思えました。ぜひご注目ください。

― バレエ以外のジャンルでも活躍されており、バレエの広報大使のような役目も担っていますね。

宮尾:それぞれのジャンルで学ぶことがたくさんあります。バレエ団では、自分はもうベテランの立場ですが、他のジャンルに飛び込むと稽古場は見知らぬ人だらけ。その場で要求されていることを察知し応えていくという緊張感が刺激になります。ミュージカルでは、慣れない歌などはもちろん緊張しますが、実は踊りの場面でも同じくらいの緊張感をもって挑んでいます。バレエダンサーですからダンスへの期待は裏切れないですし、これをきっかけにバレエに興味を持っていただけたらと思っていますから。


 本公演の監修は熊川哲也。細かい演出が凝らされているところも見どころだ。特に毎年工夫が凝らされるオープニングにはぜひご注目を!ダンサーが話す場面もあり普段バレエの舞台では絶対声を出さないダンサーの声が聴けるのもうれしい。
内容は本格的ながら、お子様からバレエファンまでが楽しめる公演はなかなか珍しい。バレエ界の王子 宮尾俊太郎と鬼才 青島広志のここでしか見られないタッグをお見逃しなく!

Photos by: Ayumu Gombi, Shunki Ogawa, Hidemi Seto