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シブヤ大学の左京学長にコメントをいただきました!

 このプロジェクトの目的は、様々なジャンルの文化・芸術の楽しみ方を伝えることでBunkamuraの魅力をもっと多くの方に知ってもらおうということでした。実施してみて、期待通りあるいは期待以上に若い方から反応があったのかなと思います。1回あたり平均500~600人の応募がある授業はシブヤ大学の中でも他にはありません。それだけの反響があったということは、宣伝・広報の力だけではなく、元々Bunkamuraが持っている魅力やプログラムの質に対して自信を持っていいということだと思います。何か魅力がないと人は足を運ばないと思うのでね。いい接点さえ作れば、若い世代の方も足を運んでくれるという証明になったのではないでしょうか。
アンケートの結果、満足度平均4.78はシブヤ大学でも一番いいぐらいの点数かなと思います。たまに5点満点もありますが、その場合は、10名未満の少人数ワークショップ形式の授業であって、今回のように多くの人を集めて行う授業で、このような評価をいただけるということは珍しいことです。この評価は素晴らしいことだと思います。

 授業の中身を一緒に作らせてもらう過程も面白かったです。講師の方の選考だったり、その役割を考える過程だったり、また、担当施設の扱う文化・芸術の面白みをどう捉えているか、そういったものを言語化して他の人にも伝わるようにコンテンツにしていく。授業タイトルや紹介文に反映していく作業一つ一つが、普段、公演のPRを目的に開催されているイベントとは作り方も違ったのではないかなと思います。
今回の授業作りにおいて一番のコンセプトに据えたのが、Bunkamuraのスタッフに焦点を当てることでした。なぜBunkamuraで働くことになったのか、日頃の仕事でどこにやりがいを感じているか、そもそも文化・芸術のどこが好きなのか、そういう個人的な思いをいかに初めての観客となる方とも共有できるかということを授業の大事なメッセージにしたいと思っていました。僕は文化・芸術に疎いということもあり、その演目だけではなくそこに携わっている方たちやその思いを含めて触れられると、より面白く感じられるし感動するところがあって、それを含めて感じてもらえるといいなと思っていました。

 また、アンケートで一番うれしかったことは「Bunkamuraで働いてみたい」という感想があったこと。これは本当に印象的でした。約10年やっているシブヤ大学でも、そんな感想は今までの記憶にはありません。
その感想が出たのはシアターコクーンの回でした。いろんな仕掛けがしてあって、客席からステージに移動しての座学から始まり、楽屋や奈落などバックヤードを見学し、最後はステージに上がってカーテンコールの練習をして、幕が上がったときにBunkamuraのスタッフの皆さんがブラボーと言って拍手をしてくれた。このプロジェクトの中でも一番覚えている景色のひとつです。半分仕掛けを知っていたのに鳥肌がたちましたし、なんだか泣きそうになりました。おそらく、参加された生徒さんも同じような感動を覚えたのではないでしょうか。授業作りに関わった方はもちろん、裏方のスタッフや役員も含めて、みんなが一生懸命拍手しながらニコニコしていた。拍手をもらってうれしかった気持ちもあるけれど、同時に、偉い人も新入社員も一緒になって仕事をしている組織は素晴らしいし、Bunkamuraで仕事をしていることがうらやましくも思えた瞬間でした。
Bunkamuraで働きたいという感想には驚きましたけど、そうだよなとも思いました。Bunkamuraのスタッフたちが携わっている文化・芸術に対する思いや信じている気持ちが、Bunkamuraを支えているものだと思ったし、それがもっともっと世の中に発信され、にじみ出て行くと、ひょっとしたら文化・芸術に触れていく人も増えていくのではないかと改めて思いました。

 もうひとつ嬉しかったことがあります。オーチャードホールの授業後にプロジェクトの関係者で打ち上げをやった時、誰が口火を切るのではなく、色々な話をしていてすごく賑やかで活気があって、みんないい顔をしていました。あの雰囲気はいいなと思ったし、こういう職場は素敵だよなと思いました。『オープン!ヴィレッジ』をきっかけに、縦割りではなく横部署を通してみんなで同じ目標に向かってできたことの結果のひとつして嬉しかったです。

 来年以降、少しずつ受け皿が大きくなったり、楽しみ方が増えたり、子供もお年寄りも若い人も足を運べるような、プロジェクトになっていくよう期待しています。

 

 

シブヤ大学 学長
左京泰明

1979年、福岡県出身。早稲田大学卒業後、住友商事株式会社に入社。2005年に退社後、特定非営利活動法人グリーンバードを経て、2006年9月、特定非営利活動法人シブヤ大学を設立、現在に至る。著書に『シブヤ大学の教科書』(シブヤ大学=編 講談社)、『働かないひと。』(弘文堂)がある。

シブヤ大学ホームページ http://www.shibuya-univ.net/