ル・シネマの番組プログラミング担当スタッフが、上映作品への熱い想いを語ります。
映画の見所や、どうしてこの映画を上映しようと思ったのか、注目してほしいシーンなど・・・。ご鑑賞の際に、ぜひ参考にしてみてください!
「終着駅 トルストイ最後の旅」は、海外の映画祭で非常に評判が高い映画でした。誰もが知っている偉人の夫婦の物語だということ、そして演じるのは名優クリストファー・プラマーとヘレン・ミレン。この情報だけでも、プログラミングを担当する私自身、何か確実なものを感じました。
この映画はトルストイの晩年を描いていますが、核になるのは妻ソフィヤとの夫婦愛。彼女は、ソクラテスの妻、モーツァルトの妻と並んで、世界三大悪妻と言われています。映画をご覧になれば感じると思いますが、ソフィヤを“悪妻”と呼ぶべきところはありません。むしろ現代に当てはめてみると、彼女は“良妻賢母”の鏡。夫に尽くし、13人もの子供を育て上げた、愛に溢れた人物だということが分かると思います。
この映画の一番の見所は、なんといっても役者の力量です。
クリストファー・プラマーは、偉人らしい器の広さと懐の深さを持ちながらも、ユーモアも持ち合わせ、時には弱さも見せる人間臭いトルストイを好演しています。
そして妻ソフィヤを演じるヘレン・ミレン。エリザベス2世を演じた『クイーン』では演技力の高さを見せてくれました。女王という宿命を背負った孤独感、哀しみを見事に体現してアカデミー主演女優賞に輝きました。彼女の演技は、本作でも期待を裏切りません。文豪の妻としてたくましく、時には少女のようにかわいらしい妻ソフィヤを演じる彼女には脱帽です。
そして、脇を固める俳優陣にもご注目ください。
チェルトコフを演じるポール・ジアマッティ。彼は『サイドウェイ』でのダメ男ぶりが印象的でしたが、本作ではがらりと変わって、トルストイへ執拗なまでの愛情を注ぐ熱狂的な信奉者を演じています。
秘書ワレンチンを演じるジェームス・マカヴォイ。個人的に、若手俳優の中では一押しです。劇中では、気の良さと誠実さが前面に出ていますよね。きっとご本人もああいう性格をお持ちなのではないでしょうか。ワレンチンとマーシャの爽やかなラブシーンは微笑ましいものです。
トルストイの娘を演じるアンヌ=マリー・ダフ。実生活では、ジェームス・マカヴォイと夫婦の関係。近作では、『ノーウェア・ボーイ ひとりぼっちのあいつ』でジョン・レノンの奔放な実の母親を演じています。本作の彼女とは対照的ですので、公開時にはぜひ見比べてみてください。
ご覧になった方は、この映画は自分たちの夫婦の物語であり、長年連れ添うことについて深く共感し、また考えさせられることでしょう。夫婦のあり方というのは、他人が判断するのではなく、お互いにしかわからない・・・。夫婦愛の素晴らしさを実感すると思います。.jpg)
今年は、トルストイの没後百年。彼は明治の日本の政治家や哲学者たちと親交が深く、また平和主義者としてガンジーらに影響を与えた人です。まさに“世界の父”とも言えるのではないでしょうか。この映画は、そんな彼の歴史を紐解き、功績を改めて理解するのには絶好の機会だと思いますので、ぜひ劇場まで足を運んでいただきたい映画です。そしてエンド・ロールには、ある“サプライズ”な映像があります。最後の最後まで映画をお楽しみください。
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