ダーシー・キスラー来日決定!

バランシンの薫陶を受けた最後のミューズ ダーシー・キスラーの来日が、他のダンサーに先駆けて決定した。
すでに来年引退を発表しているため、彼女の来日公演は今回が最後となる。
そんな彼女にこれまでとこれからについて、ニューヨークで聞いてみた。
※出演する演目の発表は公演直前、または公演当日となります。


――東京公演が楽しみですね。

ダーシー・キスラー(以下DK):
日本に行くのは5年ぶり。前回は東京と大阪に行き、とても楽しかったわ。日本は大好きです。
日本のお客さんたちはバレエを技術面からも評価してくれるから。約30年におよぶダンサーとしてのキャリアの中では、
日本に行く度に、お客さんたちがバランシンのバレエに慣れ親しんでくれているように思います。
日本では最初、「白鳥の湖」のようなクラシックな作品が好まれていたと思います。
しかし、新しいものにオープンな世代がバランシンのバレエに興味を持ってくれて、とても嬉しいです。
アメリカに比べて、日本のお客さんたちの方がより洗練されていて、バレエに関する知識も豊富だと思います。
今から東京公演を楽しみにしています。

――今回の東京公演が現役ダンサーとしては最後になってしまいますね。

DK: そうです。でも、私は素晴らしいキャリアを持つことができたと思います。
既に15年以上もバレエを教えてきていますが、教えることに専念できることを実は、楽しみにしています。
自分が踊るために教えるのをセーブしなくて済むからです。
私はこれまで数多くのバレエ・ダンサーを見てきて、あきらめ切れない人をたくさん見てきました。
つまり、教えなければならない相手のために踊るのではなく、ずっと自分のために踊り続ける人たち。
私はそうなりたくなかったのです。だから、何度も自問自答しました。
「舞台から降りてもいいの?」「舞台で踊ること以外のことに自分を110%捧げることができる?」。
若い子たちには、私よりも、もっと、もっと、いいダンサーになって欲しいと思います。
次の世代はもっと良くならなければならない、と。だから引退することは正しい選択だと思いました。

――次の世代に託すという考えは、ジョージ・バランシンの教えに基づくものでしょうか?

DK: ミスター・ビー(バランシンの愛称)はとても謙虚な人でした。
スターは彼ではなく、彼の振付が注目されるべきだということを理解していた。
そして、私によくこう言った。「(つま先を軸に体を回転させる)ピルエットは2回以上する必要はない。
3回もすると、まるで観客に向かって『私を見て!』と自慢しているみたいだ」と。
彼は常に、真実と謙虚さを大切にする人でした。
だから、私は「バランシン・テクニック」とまるでそれがある種のトレードマークのように宣伝している人を見ると、
とても嫌な気持ちになります。それこそ「バランシンらしくない」と思うからです。
なぜなら、バランシンは決して自分のために躍ったり、教えたりするようなエゴイスティックな人ではなかったからです。

-――ダンサーとして特に思い出に残る作品は?

DK:初めて「白鳥の湖」を踊ったときや、ピーターが振付をした「眠れる森の美女」を踊ったときなど、
どの作品も初めて踊ったときの思い出は特に強いわ。NYCBはレパートリーが多いからとても恵まれたバレエ団だと思うの。
「ロミオとジュリエット」もあるわ。クラシック・バレエがそろっているうえ、
ジェローム・ロビンズの「ウェスト・サイド・ストーリー」のような作品もある。
NYCBで踊っている限り、たいくつすることはないわ(笑)。私はここで踊れたことを光栄に思っています。
©Hirotsugu Okamura
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