大野和士の“世界基準”を再認識させる驚愕の出来栄え!
昨日15時開演の「ウェルテル」は、大野和士の指揮ぶりに約2,000人の聴衆が酔った。日本人にとっては馴染みの薄いこのフランス・オペラを、なぜコンチェルタンテ(演奏会形式)で取り上げたのか、客席で公演に接した人々は、大野の意図を理解することが出来た。
マスネの非常に密度の高い音楽に、余計な演出に邪魔されることなく、より集中することが出来る。シャルロット役のケイト・オールドリッチをはじめ歌手はみな素晴らしかったが、主役はオーケストラだったのかもしれない。リヨン歌劇場管弦楽団の美しいサウンドと、見事なドラマ作りが、劇的な効果を生み出した。
大野和士が、ミラノ、パリ、ニューヨークと、世界の主要な歌劇場から引っ張りだこの群を抜いた才能であることを改めて認識させられた。終演後、20分にも及ぶカーテンコールは、大野への感謝とこれからますますの活躍を期待するものだろう。