「若者の苦悩」を描いたマスネの傑作を、大野和士とフレッシュな歌手たちが現代に蘇らせる!

〜今しか聴けない“旬”な組み合わせで。〜

 リヨンはフランス第2の都市で、美食の街としても有名だ。ローヌ川とソーヌ川に挟まれ、ローマ時代から栄えていた。フランスの銀行の多くが本店を構える金融の街としても知られ、約100年ほど前には若き銀行員だった永井荷風がリヨンに滞在して、歌劇場にも通っていたと言う。そんな歴史を持つリヨン歌劇場は、現在フランス国内でパリと並ぶただ2つだけの「国立」の歌劇場であり、また歌劇場専属のオーケストラを持つのもパリとリヨンだけなのである。
 2008年からこのリヨン歌劇場を率いる大野和士は、その歌劇場のオーケストラの個性を「フランス的なエレガントさと同時に、あらゆる時代の音楽に対応出来る高い能力」と表現する。だからこそ、フランス・ロマン派を代表する作曲家であるマスネ(「タイスの瞑想曲」などで有名)の隠れた傑作「ウェルテル」(1892年初演)を来日公演の演目に選んだ。ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」の影響を受けつつ、「叶えられない愛」という永遠のテーマ(ゲーテの原作にも存在する)を叙情的に描き出したオペラである。絶望的な愛に突き動かされた主人公ウェルテルが苦悩する第3幕から終幕にかけては、劇的な盛り上がりをみせる。
 この日本公演のために起用されたヴァレンティとオールドリッチも若手の注目歌手で、これからのオペラ界を担う人材と期待されている。大野とオーケストラ、そして若き歌い手たちの二度と聴けない絶妙のコラボレーションをじっくり味わおう。

文:片桐卓也(音楽ジャーナリスト)

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