観劇レポート到着!大人たちよ、急げ劇場へ!

大人たちが燃えている
 
 
 大人の本気をなめたらいかん、と心底思う。蜷川幸雄の情熱に煽られ、技術も経験も存在感も圧倒的なベテランたちが魂込めたこの舞台、これほど激しく心揺さぶられるとは。狂気の淵で狡猾さも覗かせる三田和代の素晴らしさに呆然、大スターの貫禄と孤独を佇まいだけで納得させる鳳蘭に感服。二人を見ているだけでも飽きないが、女優という人生に身を捧げてきたジュリエットたち一人一人の想いの深さが、鬼気迫る真実味を加えて切実だ。狂おしい女たちに翻弄されるオジサマ軍団のチャーミングないぶし銀ぶり、対する若者代表ウエンツ瑛士のナチュラルさ。作品に奥行きをもたらした男たちの存在も忘れがたい。
 意外なほど笑いも多いが、生ぬるいお涙頂戴だのライトな笑いがほしけりゃよそへ行け。暇つぶしにお芝居でもホホホ、なんつう有閑マダム(死語か)より、地に足つけて日々を懸命に生きてる大人にこそ観てほしい。ガツンとくる衝撃に胸ざわめき、気が付けば怒濤の如く感動の渦に巻き込まれる。演じる者と観る者の熱気がひとつにうねる空間に、どっぷり身を浸すこの幸せ。大人たちよ、劇場へ!
 
 (文=市川安紀)
 

撮影:谷古宇正彦

ページの先頭に戻る
Copyright (C) TOKYU BUNKAMURA, Inc. All Rights Reserved.