出品作品《忘れえぬ女》について〜 亀山郁夫氏(東京外国語大学長)にコメントをいただきました!〜
亀山郁夫氏(東京外国語大学長) |
「19世紀末ロシア、舞台はペテルブルグ。近代化がすすむ時代のとば口で自立せんとする一人の女性の悩みと苦しみを描きとった傑作です。とくに気になるのが、目もとのうるみ。誇り高い心をもつ一人の女性にふとしのび寄る悲劇、あるいは、高貴な美しさの奥に秘められたデカダンスの影。そのうるみはまた、一個の被写体として自立せんとする女性の心のあがきも表しているかのようです。どこか人を見下ろすようなまなざしにも、他者への蔑みは感じられず、むしろ被写体となる誇りと恥じらいの葛藤をかいまみることができます。無限の深みと謎とニュアンスを湛えたこのキャンヴァス、『ロシアのモナリザ』は、いま、胸のうちにせりあがる悲しみを抑え、どこに向かおうとしているのでしょうか。」
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イワン・クラムスコイ 《忘れえぬ女》 1883年 油彩・キャンヴァス
©The State Tretyakov Gallery
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