アンカー研究の第一人者、バッタチャルヤさん、アンカーの魅力を語る!

 ベルン美術館学芸員であり、アンカー研究の第一人者、テレーゼ・バッタチャルヤ=シュテットラーさんにアンカーの魅力について語っていただきました。

   
 

「本展では、油彩、素描、水彩、そしてアンカーが家族を養うために携わっていたファイアンス陶器の絵付けの作品まで、たくさんの作品を展示しています。展覧会をご覧いただけば、アンカーの主題は子どもたちであったことがお分かりになるでしょう。子どもたちを描いた作品からは、悩みや心配事のないのびやかな精神と、汚されていない世界の姿を感じ取れます」

「アンカーは、絵画への探求を、偉大なスイスの教育者、ジャン=ジャック・ルソーとヨハン・ハインリッヒ・ペスタロッツィの考えを基本にしています。子どもが遊ぶ、読書する、勉強する、学校へ行くというような、子どもたちが日々行っていることは、アンカーのお気に入りのモティーフでした」

「そしてまた、アンカーは静物画においても偉大なる画家でした。それらは決してサロンに出品されるために描かれたものではなく、個人的な興味で描かれたものであるとされています。それらの作品には、静物画としての現実的な側面もありながら、対象を「雰囲気に富んだ美しい」側面で描き出しています。イギリスの人類学者によると、日本では日々使用するものに、機能的であることと同時に、そのもの本来の美しさにも重きをおき、空間を含め「雰囲気に富んだ美しい」ものとして本質的に扱う人種であるとのことです。きっと皆様にも、アンカーの作品がシンプルな対象に対して、最大級の気配りと深い愛情をもって描かれていることがわかるでしょう」

「アンカーは生涯を、資本主義のフランスとスイスの田舎の村を行き来することで幸せに暮らしました。今回スイス以外で初の回顧展を行にあたり、日本でたくさんの方に作品をご覧いただくということを、アンカー自身もきっと誇りに思うに違いありません」

 余談ですが、スイスでは、金髪の女の子のことを「アンカーガール」と呼ぶそうです。まるでアンカーの絵に出てくるかのような女の子、という意味で、それだけスイスではアンカーが国民的に浸透しているということがわかるエピソードですね。

 

 

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