「ヘアスプレー」アメリカツアー公演レポート
「オフ・コース、ノット!」
ちょっぴり太っちょだけど、歌と踊りが大好きな我らがヒロイン、トレイシーが「私もみんなのようにTVのショーに出たい」と言った時の、ライバル、アンバーのママの反応である。「もちろん、ダメよ」という言葉に、自分でもびっくりするぐらいにアッタマに来たのは、もうこの段階でトレイシーという女の子に恋してしまったから。外野の私が怒っているのに、当のトレイシーは平気の平左。しかもとことんポジティブなので、その元気と愛らしさがどんどん周りの人々に伝染するのが何とも痛快だ。
『ヘアスプレー』の来日カンパニーを一言で表すと、“適材適所のキャスティングのチーム”と言えるだろう。ブロードウェイ・オリジナル版トレイシーよりももっと弾んだゴムマリ化したブルックリンは、本当に元気はつらつで、ジェリー・オーボイル扮するママ、エドナが彼女の影響を受けて日増しにゴージャスになっていくのが容易に納得できる。トレイシーとは反対に永遠の女子高生チックの親友ペニー役のアリッサは、コミカルな部分がより強調され、フロリダのお客には大受けだった。
.jpg)
そうそう、このペニーとトレイシーのボーイフレンド役シーウィードのクリスチャンと、リンクのコンスタンティンは手脚の長さを効かせたキレのいいダンスが魅力。彼らの横で丸っこいトレイシーと変テコなペニーが踊るアンバランスのグッド・バランスも、振付のジェリー・ミッチェルが密かに意図したはずの見どころの一つ。しかもしかも、60年代のヒット・ソングにインスピレーションを受けたというナンバーの数々は、いつの間にか一緒に歌いたくなるぐらい耳馴染みが良くって。
人が恋に落ちるのは・・・耳元(頭の中)で鐘が鳴るから、という『ヘアスプレー』のセオリーも今の時代はかえって新鮮。思わず舞台に駆け上がって参加したくなる満点のミュージカルだ。
texts:佐藤友紀
photos:Jun Wajda
|
|
|