項羽と虞美人のふたりは今生を惜しむかのように最後の舞を舞う。静かなメロディの中、愛情の全てを捧げ、別れを惜しむパ・ド・ドゥが切なく踊られる。
暗闇に青く浮かびあがる衣裳をまとい、剣を手にした女性たちの幻想的な群舞の中、ふたりは永遠の愛を誓い、虞美人は自害する。項羽は虞美人をいつまでも抱いたまま、最愛の人を失った哀しみにうちひしがれる。
空は血のような真っ赤な夕日に染まり、桃の花びらが降り積もる。心に染みる歌が悲恋をいっそう哀しいものにする。項羽もまた死を決意し、ふたりは抱き合うようにして寄り添い、死後の永遠の愛を誓う。
劉邦は勝利を手にし、項羽は英雄の人生に終止符を打った。
項羽と虞美人は英雄美女、生死離別と言われ、その壮絶な愛の物語は今もなお生き続けている。

「覇王別姫」はおうべっき 項羽と虞美人の別れの場面。項羽は「愛馬も進まなくなり、虞よ、おまえをどうしたらよいか」と歌う。項羽を慰めようと剣を舞う虞美人は、項羽に脱出をすすめ、自分が足手まといになるのを恐れて自害する。項羽もまた、死を決意して自らの命を絶つ。京劇の演目としても広く知られている。