1830年に建国したベルギーは、中世末期からの芸術文化の伝統を蓄えながらも、いわば新興国として歩みだしました。その発展に大きく寄与したのが、南部の豊富な石炭と鉄鉱石、そして本国の何十倍もあるコンゴという豊かな植民地からの富でした。それは産業革命を加速させ、19世紀後半には、産業も都市もそれまでにない飛躍的な発展を遂げるのです。その恩恵は芸術の分野にも及び、この時代には多くの優れた画家が輩出しました。特に首都ブリュッセルでは、富を得たリベラルな若い実業家たちが、新しい芸術の動きを支えていきました。
しかしながらその中身は、皮肉にも社会発展のひずみに根を張った隠花植物のような、癖のあるものが際立っていました。産業化する近代社会における人間の疎外を背景に、ある芸術家は空想の世界に、あるいは黄昏の薄暗がりの中に逃げ場を求め、またあるものは時を遡ることに心の平安を見出したのです。美術史の中にベルギー幻想美術というくくりがあるわけではありませんが、この時代に最も強いメッセージを放っていたのは、象徴主義、シュルレアリスム、表現主義にまたがるこうした内向的な芸術家たちの作品群なのです。










