ケラリーノ・サンドロヴィッチ昭和三部作・第二弾!

タ黴菌

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

2010年12月4日(土)〜26日(日)

Bunkamuraシアターコクーン

時は昭和20年。敗戦直後の日本。
郊外に建つミステリアスは洋館を舞台にKERAが描く、複雑怪奇な密室群像劇。

クリエイターには2つの種類がいる。ひとつの道をとことん追求するタイプと、常に新しいアプローチを探すタイプと。ケラリーノ・サンドロヴィッチ(以下、KERA)は間違いなく後者、それどころか、この人ほど次々と新しいアプローチを探し出し、一ヵ所にとどまらないことを常態にしているクリエイターも珍しい。何しろ新作についての構想を聞き、なぜそれをやろうと決めたか理由をたずねると、必ず出てくる言葉が「まだやっていないことをやろうと思って」なのだ。
 もちろん『黴菌』も例にもれない。昨年の12月から今年の1月にかけ、Bunkamura20周年のラストを飾った『東京月光魔曲』(以下、『魔曲』)に続く「昭和三部作」(昭和初期三部作改め)の第2弾となる今作も、「前回やらなかったこと」をキーワードにしたアプローチで詳細が決まりつつある。
 何よりも大きな違いは、『魔曲』が言ってみれば“引き”であったのに対し、『黴菌』が“寄り”の作品になりそうだと言うことだろう。「『魔曲』は東京という街をパノラミックに見せながら物語を構成しましたが、『黴菌』は逆に人間のドラマにフォーカスした密室劇、ある種のスケール感を持った会話劇にしたいと考えています。場所も前回のようにあちこち変わるのではなく、ひとつの家の室内に限定したい。それもアッパー階級が住む洋館をイメージしています。密室劇の楽しさのひとつは室内のディテールに凝れることなので、そのあたりはいろいろ考えたいですね」と、KERA。これで5作目になるコクーンプロデュース、他の仕事でも何度かコクーンを使っていることもあり、空間の使い方は慣れたもの。今回も、密室劇を近く大きく見せる工夫が、すでに頭の中にある。「とは言っても、脚本を書く前に取材で答えたことと書き上がったものが違う、という場合が僕はほとんどですから。今回も“変わります宣言”はしておきたい(笑)。ただ、ひとつだけ保証できるのは、『魔曲』を観ていなくても楽しんでもらえることです」
 近代都市として発展し始めた昭和初期の東京に、近親相姦や新興宗教や猟奇殺人が奇妙で美しい花を咲かせた前作を脱ぎ捨て、敗戦間もない東京を舞台にする『黴菌』は、どんな光景を見せてくれるのだろう。

2010年9月取材:徳永京子(演劇ジャーナリスト)

作・演出:ケラリーノ・サンドロヴィッチ

東京都出身。1982年、ニューウェーブ・バンド・有頂天を結成。並行して85年に犬山イヌコ(当時は犬山犬子)、みのすけ、田口トモロヲらと劇団「健康」を旗揚げ、演劇活動を開始する。92年に解散、翌93年に「ナイロン100℃」を始動。99年には『フローズン・ビーチ』で第43回岸田國士戯曲賞を受賞。他にも受賞歴多数。劇団公演に加え、KERA・MAP、オリガト・プラスティコなどのユニットも主宰・参加する他、さいたまゴールド・シアターへの書き下ろしなど外部プロデュース公演への参加も多い。劇団での最新作は、『2番目、或いは3番目』。また、近年は映像分野でも活躍。2003年に初監督映画『1980』のほか、映画『おいしい殺し方』、『グミ・チョコレート・パイン』(原作・大槻ケンヂ)、『罪とか罰とか』、TV『時効警察』シリーズなどがある。音楽活動では、バンド『ケラ&ザ・シンセサイザーズ』でボーカルを務め、ニューアルバム『Body and Song』が12月8日に発売。


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