

井上ひさしの初期の傑作戯曲に演出家・蜷川幸雄が挑むシリーズにいよいよ真打(?!)登場。1970年に発表された本作は「エレキテル」の発明や「土用の丑の日」、「キャッチコピー」の発案で知られる江戸時代の天才・平賀源内の一代記。奔放な才能を開花させながら、当時の社会からは「奇人」と噂された源内。
その湧き出る才気や葛藤を、“表”と“裏”に二分されたキャラクターによる喜劇的合戦にのせて展開していく。
“表の源内”に、初タッグにしてコクーン初登場の上川隆也、“裏の源内”には蜷川作品に欠くことのできない勝村政信。音楽は「白夜の女騎士」「カリギュラ」の朝比奈尚行。
最高のスタッフ・キャストが集結し、上演困難といわれてきた本作をついに蜷川幸雄が演出。新たな伝説となる抱腹絶倒音楽劇の幕が上がる。

時は享保十四年、貧しい足軽の家に生まれた四方吉は、四国随一の神童と呼ばれる美少年に成長し、松平藩の若君・頼恭の鬼役を命じられ、遊び・勉学の相手を務めるようになる。
成人した四方吉は平賀源内と改名し、本草学(中国古来の植物学・薬物学)を学ぶために官費で長崎に留学し、南蛮渡来の珍品や、隠れ切支丹狩り、密輸などが横行する長崎で、遊女・花扇と出会う。
オランダ語や医学を学んだ源内は本草学を究めるために今度は江戸へ留学する。
日本初の物産会をひらく資金繰りのために三井高光のもとを訪れ、鳥山検校のめかけ青茶婆(じつは花扇)と再会する。物産会を成功させた源内は若手第一の本草学者となるが、立身出世を狙い幕府に仕官するために高松藩辞任願いをする。それを面白くなく思った頼恭は源内の高松藩辞職の願いを受諾するとともに、他藩への仕官を禁じてしまう。出世の道を断たれた源内は蟄居の身となりながら、人々の考えも及ばないような新たな開発・発明を続ける。しかしそれは民衆の生活には届かず、源内は江戸中から“山師”と呼ばれるようになり・・・。