ストーリー
禅師・道元と新興宗教の教祖、二人の男の記憶と思想が、時空を超えてもつれ合う―。
時は寛元元年(1243年)。日本曹洞宗の開祖・道元によって開かれた宝林寺では、開山7周年の記念に弟子の禅僧たちによる余興『道元禅師半生記』が上演されようとしていた。このところ道元は、ひどく頻繁に夢うつつの世界に迷い込んでしまう、夢の中で彼は彼でなく、いつの時代か、婦女暴行の容疑で拘留中のひとりの“男”になっていた。一方、現実の世界でも道元は、既存の仏教に否定的で新仏教を立ち上げたことにより幕府や朝廷、比叡山の僧兵たちから睨まれ、その圧力に動揺を隠せない。誠の教えを求め、悟りを開いて世情を超越したはずの道元だが、過去と現在、不可解な夢を彷徨いながら、いつしかその心を迷いの渦に絡めとられていく――。