産業革命期に英国随一の海港都市として栄えたスコットランド・グラスゴー出身のウィリアム・バレルは、若くして家業の海運業を手伝い始めた後、船舶の売買で大成功し「海運王」と称されました。
少年の頃から美術品に関心を持っていたバレルは、1890年代から1920年代にかけて主に画商アレクサンダー・リードから作品を購入し、ペプローやメルヴィルなどスコットランドの画家をはじめ、クロホールなど特にグラスゴーで活躍した画家の作品を好んで集め、徐々にフランス絵画にも興味を抱くようになりました。同時に古今東西の美術工芸品の収集にも意欲を燃やしました。
1944年、バレルはコレクションのうち何千点もの作品をグラスゴー市に寄付し、それが美術館「バレル・コレクション」となりました。美術館建設に関しての条件は大きく二つ、「大気汚染の影響が少ない郊外に作品を展示すること」「国外に持ち出さないこと」でした。厳しい条件の中、本展は本国のバレル・コレクション改装に伴い、奇跡的に実現した展覧会。9,000点以上にも及ぶ同コレクションの中から西洋近代絵画を中心に、計80点の作品をご紹介します。英国でしか見ることのできなかった海運王の世界屈指の夢のコレクションを、渋谷でご堪能ください!
知られざるスコットランドの画家の作品から、巨匠のフランス絵画まで-グラスゴー市のバレル・コレクションから73点が初来日。同市のケルヴィングローヴ美術博物館からの出展を含む全80作品中、76点が日本初公開!本国のバレル・コレクションが閉館中だからこそ実現した、日本での開催です。
来日作品の中でも特に、バレエを題材にしたドガの初期の作品《リハーサル》は門外不出の名作!
繊細かつ大胆な構図と色彩が美しい本作を絶対にお見逃しなく。
数々の巨匠の作品が、バレル・コレクションのほか同市のケルヴィングローヴ美術博物館からも7点の出展。
1861年に英国、スコットランドの海港都市グラスゴーに9人兄弟の三男として生まれる。15歳で家業の海運業を手伝い始め、24歳で父親の跡を継ぐ。その後、船舶の売買で大成功し「海運王」と称された。
当時、英国随一の海港都市として経済成長が著しかったグラスゴーでは、美術品市場も活況となっていた。バレルも少年の頃から美術品に関心を持って収集を始めており、1890年代から1920年代にかけて、グラスゴー出身の画商アレクサンダー・リード(1854 -1928年)から作品を購入。5,000年に及ぶ、古今東西の美術工芸品を収集した。
1944年、バレルは約9,000点にも上るコレクションのうち、数千点もの作品をグラスゴー市に寄贈。その条件として、当時深刻な社会問題であった大気汚染の影響が少ない郊外にコレクションの作品を展示すること、また英国外には貸し出さないことが提示された。1983年にグラスゴー市は郊外のポロック公園内にコレクションを移し、バレル・コレクション(The Burrell Collection)として一般公開。以降、近代名画を集めた世界屈指のコレクションと称され多くの観光客が訪れている。同館は2015年から2020年まで改修工事により閉館しているため、英国外への作品の貸し出しが可能になり、海を越えて本展の開催が実現した。
アレクサンダー・リードはバレルをはじめ、グラスゴー在住の美術愛好家達に同時代のフランス美術を紹介した人物。画家のフィンセント・ファン・ゴッホの弟で画商のテオ・ファン・ゴッホと一緒に暮らしていたこともある、敏腕画商。バレルはリードの事を「リードは良質な絵画とそれを愛でる心をスコットランドにもたらした功労者である」と言っていたという。本展では、巨匠ゴッホがリードを描いたアレクサンダー・リードの肖像画も展示いたします。