第17回「ち」
クラシック音楽、演劇、アートなどには独特の専門用語が使われていて、知っておくと文化芸術をもっと楽しめるようになるものがたくさんあります。そうした用語の数々を、誰かに話したくなるようなトリビアを交えて解説する「Bunka Dictionary Bunka辞典」。第17回は「ち」です。
【千鳥】ちどり/音楽・演劇・ミュージカル/日本語
「千鳥」とは、上下左右の位置を揃えず互い違いに配置・施工することを指す建築用語で、その由来は着物の文様などに用いられる千鳥格子やジグザグに歩く千鳥足など諸説あります。舞台用語としては、コンサートホールや劇場で観客の視野を確保することを目的に、客席の椅子を前列の椅子と椅子の間にずらす並べ方を指します。こうした互い違いの座席配置にすることによって、観客は前に座る人の頭越しではなく肩越しにステージを見ることができるというメリットがあり、オーチャードホールでも1階前方(1~19列席)センターブロックに千鳥配置を採用しています。

【着到盤(着到板)】ちゃくとうばん・ちゃくとういた/音楽・演劇・ミュージカル・歌舞伎/日本語
コンサートや舞台を上演する劇場・ホールには多くの出演者やスタッフが出入りします。そうした人の流れを把握するため楽屋口に設けられているのが、「着到盤(あるいは着到板)」と呼ばれる表示板です。ちなみに着到とは“目的地に行き着くこと”を意味します。
着到盤には出演者の名札がぶら下げられていて、劇場に到着した時と帰る時に自分の名札をひっくり返し、誰が劇場にいるか一覧できるようになっています。また、出演者の名前をボードに記している着到盤もあり、自分の名前の場所に開いている穴に到着したらピンを差し込むようになっています。いわばタイムカード代わりのようなもので、歌舞伎小屋で用いられたのが発祥とされています。なお、歌舞伎の開演約30分前に始まりを知らせる合図として笛・太鼓・大太鼓で演奏する囃子も「着到」と呼びます。もともと座頭(ざがしら)の俳優が楽屋入りした時にその合図として囃子が演奏されていたのが由来です。
【チャリ】ちゃり/歌舞伎/日本語
「チャリ」とは“道化”を意味する関西の方言で、歌舞伎や人形浄瑠璃においても滑稽な演技で笑いを取る道化役を「チャリ」と呼びます。さらに、笑わせることを目的とした滑稽な場面そのものを「チャリ場」と言うこともあります。チャリの語源は不明ですが、『和田合戦女舞鶴』の「阿闍梨(あじゃり)」の段で別当阿闍梨が手負いの真似をして敵を欺く滑稽な語りが評判となり、「阿闍梨場」と呼んだのが転じたという説があります。
チャリは緊張した場面の合間に登場し、ふざけた台詞や滑稽な動作で緊張を和らげる効果を発揮します。『義経千本桜』で義経一行を追う早見藤太や、『仮名手本忠臣蔵』での吉良家の側用人家老・鷺坂伴内の演技などが代表例で、こうした道化がかった敵(かたき)役を「チャリ敵」とも呼びます。
【チュチュ】Tutu/バレエ/フランス語
バレエの舞台上での動きに柔らかく幻想的な印象を与える上で大きな役割を果たすのが、バレリーナの可憐で華やかな衣装。その代表的なものが、純白のチュールとオーガンジーなど薄く張りのある生地を何枚も重ねて作られた「チュチュ」と呼ばれるスカートです。
チュチュには大きく分けて2種類のデザインがあります。まず1つは、フランスで19世紀前半に流行したロマンティック・バレエ(幻想的で物語性の高いバレエ)を発祥とする「ロマンティック・チュチュ」。膝下まで届くほど丈が長く、幻想的かつ優美な雰囲気を表現します。もう1つは、19世紀末にロシアで成立したクラシック・バレエ(物語とは関係ない様式性の高いダンスシーンを取り入れたバレエ)で用いられた「クラシック・チュチュ」。硬くて短い丈が特徴的で、脚の曲線美を強調するとともに高度なテクニックによるアクロバティックな技が映えます。


