新原泰佑(俳優)
“文化の継承者”として次世代を担う気鋭のアーティストたちが登場し、それぞれの文化芸術にかける情熱や未来について語る「Bunka Baton」。作品を重ねるごとに鮮やかなステップアップを見せて“今、気になる存在”の筆頭に立つ若手実力俳優、新原泰佑さんにお話を伺いました。真っ直ぐな視線、朗らかな語り口に演技への情熱が覗きます。
自分の核となる言葉
「いつでも勇敢に」を胸に
役の人生を全うしていく
映像や舞台の話題作で次々と濃い印象を残し、注目度急上昇中の新原泰佑さん。とくに舞台では、端正な体躯から繰り出すしなやかな身のこなしに引きつけられます。幼少期に始めたダンスによって表現する楽しさを知り、さらに演技の世界へ……と自身の道程を快活に語る、その思考もやはり“しなやか”な魅力にあふれていました。
「ダンスは習い事として母親と一緒に始めたんですが、踊ることは最初から好きでしたね。好きというか、楽しくて“自分の中で当たり前に近い状態”といった感覚でした。お芝居に興味が湧いたのは、あるミュージカルを観たことがきっかけです。ずっとダンスしかしてこなかったけれど、そこに歌と言葉が合わさると、ダンスの何倍も違う世界が広がって見えるんだ!と。それらの融合の爆発力みたいなものに衝撃を受けて、お芝居をやってみようと思ったんです」

夢への第一歩として2018年に“日本一のイケメン高校生”を決めるコンテストに出場し、グランプリを受賞。そこから表現の世界へと踏み出していきます。ミュージカルのみならずストレートプレイにも果敢に挑むなか、2024年には『インヘリタンス-継承-』、『球体の球体』の二作品の演技で高い評価を獲得。その年の読売演劇大賞で新人賞にあたる杉村春子賞を受賞し、確かな実力と瑞々しい個性を世に知らしめました。中でも上演時間6時間半という大作で、二役を演じ分けた『インヘリタンス-継承-』は、「自信につながった大きな経験」と振り返ります。
「あの作品を乗り切ったからどんな作品でもきっと僕ならいける! 負けない!という気持ちになりましたし、“芝居とは何か”を教えてもらった作品ですね。作者のマシュー・ロペスさんが来日して舞台を観てくださった際に、僕の台本に「Be always brave」と書いてくれたんですよ。この「いつでも勇敢に」という言葉は、ずっと僕の中で核の部分となっています。その言葉を思うと自然と力が湧いてくるように感じられるので、大切にしていますね」
ゲイ・コミュニティを描いた『インヘリタンス-継承-』の世界で、躊躇なく大胆に劇空間を生きた新原さんの姿を思い起こすと、まさしく勇敢という言葉が浮かびます。
「躊躇していたら、自分が演じる“彼ら”に顔向けできない気がして。僕ら俳優の仕事は、台本に書かれている役の、彼らの人生を全うすることだと思うんです」
変化を恐れずに
自らをすべて捧げて
寺山修司の世界にダイブする
作品や役柄に向き合う姿勢はつねに真摯に、そして勇敢に。そんな新原さんの新たな出会いは、10月に上演されるミュージカル『獅子 THE LION-BEAT』。アングラ演劇の巨匠、寺山修司がたった一回の公演のために1965 年に書き下ろした“幻の戯曲”が、実に61年の時を経て再登場です。新原さんが演じるのは、ボクシング選手になることを夢見ていた、印鑑屋で働くごく普通の青年・貞夫。不思議な力を持つ中年男との出会いによって、貞夫の運命は大きく動き出すことに……。新原さんにとっては生まれる前の昭和の時代、猥雑な匂いが立ちこめる魅惑の劇世界への挑戦です。
「出演が決まってから寺山修司さんに関するものに目がいくようになり、展示会などに頻繁に足を運ぶようになりました。寺山さんの紡ぐ言葉はこんなにも生々しくて傷だらけで重いのに、どこか景気の良さや爽快感がある。そのギャップが寺山修司作品ならではの魅力で、その世界の一員になれることを光栄に思います。僕を選んでいただいたからには、自分の身をすべて捧げる気持ちで、作品に投じることが出来ればいいなと思っています」

演出を担う杉原邦生さんとの初めての作品づくりにも、「杉原さんのクリエイティブな発想をキャッチできるように、そして来たジャブを打ち返せるようにしていきたい」と意欲十分。刺激あふれるアンダーグラウンドの世界で、またもや鮮烈に、しなやかに跳躍する姿を見せてくれることでしょう。譲れないものは?の問いには、しばし考えた後、「全然ないかもしれません」とすっきりした笑顔を見せてくれました。
「変わっていっていいんじゃないかなって思うんですよね。ただ、譲れないものというより、自分の中でブレない軸はちゃんと持っていようと思っています。それ以外は譲ったほうが、もっと視野を広く持てるような気がするので。『獅子THE LION-BEAT』は、ずっとフラフラしている貞夫にとって譲れないものが見つかっていく、そういった作品なのかなと。彼なりの譲れないものを見つけていきたいですね。僕自身、まだまだ学ばなきゃいけないことがたくさんありますし、まだまだ学びたい意欲があります。その意欲が消えないように、ずっと新たな発見をしていけたらと思っています」
取材・文:上野紀子

〈プロフィール〉
4歳からダンスを始め、ヒップホップやジャズなど、様々なジャンルを学ぶ。“日本一のイケメン高校生”を決める「男子高生ミスターコン2018」にてグランプリを受賞し、以降俳優として活動を始める。2024年、第32回読売演劇大賞 杉村春子賞受賞。近年の主な出演作に、【舞台】『ニュージーズ』(21)、『ロミオとジュリエット』(23)、『球体の球体』『インヘリタンス-継承-』(24)、『梨泰院クラス』(25)、【音楽劇】『クラウディア』(22)、【映画】『YOUNG&FINE』(25)、『終点のあの子』(26)、【ドラマ】『アオハライド』(23·24・WOWOW)、『ちょっとだけエスパー』(25・EX)、『25時、赤坂で Season2』(25・TX)、『御上先生』(25・TBS)などがある。

〈公演情報〉
Bunkamura Production 2026
ミュージカル『獅子 THE LION-BEAT』
2026/10/4(日)~10/20(火)
会場:THEATER MILANO-Za (東急歌舞伎町タワー6階)
ほか、大阪公演あり
