第12回「し」
クラシック音楽、演劇、アートなどには独特の専門用語が使われていて、知っておくと文化芸術をもっと楽しめるようになるものがたくさんあります。そうした用語の数々を、誰かに話したくなるようなトリビアを交えて解説する「Bunka Dictionary Bunka辞典」。第12回は「し」です。
【四君子】しくんし/アート/日本語
西洋画と東洋画では、描かれる題材に共通点もあれば違いもあります。西洋画では風景画・静物画・肖像画・歴史画・宗教画などがよく描かれるのに対して、東洋画では自然の風景、人物、仏教の教え、さらに花や鳥が好んで画題に用いられています。
そうした東洋画ならではの画題の1つに「四君子」があります。四君子とは、蘭・竹・梅・菊という4つの植物を、中国で理想的な人物とされる君子(学識・人格ともに優れた徳の高い人物)にたとえたもの。それぞれ気品の高い美しさが特長で、春は蘭、夏は竹、秋は菊、冬は梅と四季を通じて題材となるため、中国宋代から東洋画の画題としてよく用いられました。四君子は絵を学ぶ者が最初に学習すべき画題とされ、その芸術観は江戸時代に日本にも伝わり、椿椿山(つばき ちんざん)による《四君子図屏風》など四君子を描いた作品が生まれました。

【シソンヌ】Sissonne/バレエ/フランス語
バレエには一つひとつの動きやポーズに用語が付けられていて、ジャンプだけでも跳び方と着地の動きによっていろんな用語があります。たとえば、前・横・後ろのいずれかへ両足で踏み切って跳び、片足で着地するという基本的なステップは「シソンヌ」。さらに、片足で着地した際に後から来る足を空中で保つ場合(両足が開いた状態)を「シソンヌ・ウーヴェルト」、後から来る足を引き寄せる場合(両足が閉じた状態)を「シソンヌ・フェルメ」と呼びます。
シソンヌという呼び名は、このステップを考案した16世紀フランスの貴族・シソンヌ伯爵に由来するとされています。しかし語源には諸説あり、ハサミを思わせる動きであることからフランス語でハサミを意味するCiseaux(シゾー)が変化したものという説もあります。
【シューボックス型】Shoebox Style/音楽/英語
音楽公演を行うコンサートホールは、その形状から「シューボックス型」と「アリーナ型」に大きく分けられます。シューボックス型とはその名の通り、靴を入れる箱のように横幅が狭く奥行きが長い直方体の形状で、一番奥にあるステージを正面から見る形で座席が配置されています。一方、アリーナ型はヴィンヤード型とも呼ばれ、ステージを囲む座席がブドウ園の段々畑(ヴィンヤード)のように連なった形状となっています。
両者のうち、特に音響が優れているとされているのがシューボックス型。天井が高く平らなため美しい残響を得ることができ、また大きな側壁からの反射音が客席全体に重厚で豊かな音場を生み出すのです。こうした特性から、世界三大ホールと呼ばれるウィーンのムジークフェラインザール、アムステルダムのコンセルトヘボウ、ボストンのシンフォニーホール、さらにBunkamuraのオーチャードホールではシューボックス型を採用しています。

【白州】しらす/能楽/日本語
能舞台と見所(観客席)との間には、舞台を囲む様に白い玉砂利(小石)が狭い幅で敷き詰められています。この場所は「白州」と呼ばれていますが、どんな意味があるのでしょう?
かつて江戸時代まで能舞台は屋外に建てられ、能舞台と見所が別棟として築かれていました。そして2つの棟の間には、白い玉石が敷き詰められていたのです。その目的は定かではありませんが、舞台の格式を高めるとともに、自然の光を舞台に反射させる照明効果を担っていたのではと考えられています。明治時代以降に能舞台と見所を能楽堂として1つの建物に納めるようになってからも、能が屋外で演じられていた名残として白州が設けられているのです。
【シルクスクリーン】Silk Screen/アート/英語
新しいアート表現が次々と生み出された20世紀美術界において大きな革命をもたらしたのが、「シルクスクリーン」と呼ばれる印刷技術です。これは絹(シルク)やナイロンなど薄い布を版として用いる版画技法の一種で、メッシュ状の版に感光乳剤を塗布し絵柄の図像を焼き付け、版を感光させてインクが透過する部分と透過しない部分を作ってから版にインクを乗せると、穴が開いている部分だけインクが落ちて印刷できるというしくみ。アンディ・ウォーホルやロイ・リキテンスタインらポップアートを代表する作家が好んで用いたことによって、芸術表現としての地位を確立しました。
シルクスクリーンの最大の革新は、大量生産と芸術的表現の両立を実現したこと。従来の版画技法では困難だった、複数枚の作品を同じ品質で精密に刷ることを可能とし、商業性と芸術性を融合するとともにアート作品の普及に大きな貢献を果たしたのです。
