第11回「さ」
クラシック音楽、演劇、アートなどには独特の専門用語が使われていて、知っておくと文化芸術をもっと楽しめるようになるものがたくさんあります。そうした用語の数々を、誰かに話したくなるようなトリビアを交えて解説する「Bunka Dictionary Bunka辞典」。第11回は「さ」です。
【作品番号】さくひんばんごう/音楽/日本語
「交響曲第○番」などクラシック音楽の作品名の後ろに「Op.15」「K.10」「BWV.100」といった記号と数字が付いているのを見たことはありませんか? これらは「作品番号」といい、数多く存在するクラシック音楽の作品を作曲家別に順序立てて整理するために、作品名の後ろに続けて付けられているのです。
作品番号の種類として一般的なのは「Op.(オーパス)」で、作曲家が作曲した順番ではなく楽譜が出版された順番に番号が付けられます。複数の曲が1冊に掲載されている曲集の場合は、「Op.10-5(作品番号10番の曲集の中の5つ目の曲)」というふうに作品番号の後にさらに数字が付きます。ほかにもJ.S.バッハの「BWV(バッハ作品主題目録番号を意味するBach Werke Verzeichnisの略)」、モーツァルトの「K(ケッヘル)」、シューベルト「D(ドイチュ)」など、特定の作曲家のための作品番号もあります。また、ベートーヴェンは楽譜出版の際に自ら作品番号を付け、死後に出版社がいくつかの作品に作品番号と題名を加えました。

【35mmフィルム】さんじゅうごみりふぃるむ/映画/日本語
映画の撮影用フィルムは、「8mm」「16mm」などフィルムの幅の大きさによって種類が異なります。フィルムのサイズが大きいほど記録できる情報量が多くなり、そのぶん映像の解像度が高くなります。劇場用の映画で一般的に用いられるのは「35mm」。その解像度はデジタルテレビ放送と比較すると4Kに相当するとされ、大きなスクリーンに投射しても美しく緻密な映像を映し出すことができます。
なお、35mmよりもさらにサイズが大きい「70mm」フィルムも存在し、面積がより広いぶん画質は高精細を極めます。『アラビアのロレンス』や『2001年宇宙の旅』など往年の大作映画に好んで使われ、通常のスクリーンよりもさらに巨大なスクリーンに投射するIMAXで上映する作品の一部は今も70mmフィルムサイズで撮影しています(IMAXデジタルカメラで撮影する作品もあり)。

【三枚目】さんまいめ/歌舞伎/日本語
容姿が優れた男性を「二枚目」、ちょっとお調子者タイプの人を「三枚目」と形容することがありますが、これらの言葉は実はもともと歌舞伎で使われていた用語なのです。
かつて江戸時代の歌舞伎の芝居小屋には出演者の名前を書いた木の板が飾られていて、「書き出し」と呼ばれる一枚目の看板には主役、二枚目の看板には色恋を演じる美男役の役者、そして三枚目には滑稽な演技をする道化役の役者の名前がそれぞれ書かれていました。こうした由来が転じて、二枚目は色男、三枚目は道化役者を指す言葉として使われるようになったのです。ちなみにこの木の板は八枚目まで存在し、「四枚目」はまとめ役、「五枚目」は敵役、「六枚目」は憎めない敵役、「七枚目」は大悪人、最後の「八枚目」は座長の名前が書かれていました。
【三役】さんやく/能楽/日本語
三枚目のほかにも伝統芸能を由来とする用語はたくさんあります。たとえば、組織を代表する立場の3つの主要な役を表す「三役」。政党の最高幹部にあたる役職や、大相撲で横綱に次ぐ番付上位の力士を表す言葉としてたびたび使われていますが、この言葉はもともと能楽で使われてきた用語です。
能楽は、主役のシテを務めるシテ方、シテの相手であるワキを務めるワキ方、能の囃子を務める囃子方、能の間(あい)狂言や狂言を演じる狂言方などの役方によって演じられます。このうちシテ方を除いたワキ方・囃子方・狂言方を総称して「三役(能楽三役)」と呼び、それぞれの役ごとに複数の流儀が存在します。なお、これらの役方は高度で専門的な技量を必要とするため、それぞれの役方が他の役方を兼ねることはありません。
