深く知り、さらに楽しむウェブマガジン

桜井玲香俳優

“文化の継承者”として次世代を担う気鋭のアーティストたちが登場し、それぞれの文化芸術に掛ける情熱や未来について語る「Bunka Baton」。今回は、2026年1月から上演する『クワイエットルームにようこそ The Musical』で松尾スズキ作品初参加となる、桜井玲香さんにお話を伺いました。

なにも知らずに飛び込んだ
ミュージカルの世界、
それがすべての始まり

今やすっかりミュージカル界に欠かせない存在となった桜井玲香さんですが、かつては「乃木坂46」の初代キャプテンとして活躍するトップアイドルでした。当時はちょうどアイドルが舞台にも活動の幅を広げ始めたころ。ある人物の存在が、桜井さんのその後の人生を大きく変えることになります。「やっぱりいくちゃん(=同じ乃木坂46 1期生の生田絵梨花さん)がミュージカルをやり始めた、同じグループにそういう子がいたというのは大きかったと思います。正直私はテレビっ子で、ドラマは大好きでしたが、舞台やミュージカルのことはよくわかっていなくて。それがいくちゃんをきっかけにグループを知ってくださる方がいて、私にもグランドミュージカルのお話をいただけた。これが私にとってはすべての始まりでした」 その作品が山口祐一郎さん主演の『レベッカ』(2018)。ミュージカル界を牽引する俳優陣がそろい、その中で桜井さんは、大塚千弘さん、平野綾さんとのトリプルキャストとして名を連ねました。 「錚々たる方々がそろっていて、今考えると心臓が飛び出してしまいそうです。それでもなんとか乗り越えられたのは、自分がなにも知らなかったこと。そしてなによりカンパニーの皆さんが、基礎からすべて教えてくださったからだと思います。自分の不甲斐なさに若干トラウマは残りましたが……(苦笑)。ただ千穐楽が終わって祐一郎さんにご挨拶した時、『これからもミュージカル続けてね』と声をかけてくださって。本当に嬉しかったですし、祐一郎さんのお相手をさせていただけたことは、かけがえのない経験になりました」 

そこから着実に舞台出演を重ね、2022年に上演された『DOROTHY~オズの魔法使い~』では、ついに単独初主演を務めることに。「グループでキャプテンをやっていた時からそうですが、私、引っ張るタイプではないんです。周りに『大丈夫?』と心配されながら、『頑張ります』と言ってなんとかやってきた感じ(苦笑)。それは主役をやらせてもらう時も同じですが、舞台って絶対にひとりではないんですよね。だから皆さんに頼らせてもらいつつ、年齢的にはそろそろしっかりしなければ、と焦ってもいます」

ミュージカルのために、
元アイドルである
自分だからこそできること

偶然足を踏み入れることになったミュージカルの世界ですが、今ではすっかりその魅力にとりつかれてしまっていると言います。「好きな音楽と好きなお芝居、その両方ができるのはミュージカルだけですから。また皆さんタフな方ばかりで、自分もその中にいると生きているな!と実感できる。映像ならではの繊細なお芝居も好きですが、それだけだと私、絶対にストレスが溜まってしまうと思っていて。その点舞台は、体力だ、筋肉だ、パワーだ!みたいな感じで発散できますし(笑)、舞台でしか得られない刺激がたくさんあると思います」そんな桜井さんは今、松尾スズキさんが作・演出を手がける『クワイエットルームにようこそ The Musical』の稽古に励まれています。本作は精神科の閉鎖病棟を舞台にした松尾さんの代表作で、ミュージカル化はこれが初。桜井さんは看護師の山岸を演じます。「共演の皆さんが個性的な方ばかりなので、山岸としてはあまりキャラを作らず、考えすぎないほうがいいのかなと思っています。そしていつかはストレートの舞台にも挑戦してみたいと思っているので、今回松尾さんの作品に参加させていただけたことが非常にありがたくて! 皆さんのお芝居を見て学んで、全部吸収していきたいと思っています」

ミュージカル界の今後のために、自分はなにができると思いますか? そう訊ねると、とてもはっきりと、桜井さんらしい答えが返ってきました。「両立、だと思います。ミュージカル俳優の方もだいぶ出られるようになりましたが、やっぱり多くの方に知ってもらうためには、歌番組にしろ、ドラマにしろ、バラエティにしろ、テレビに出ることは大切だと思っていて。そういう意味でもあまり決めつけず、出られるところには出ていきたいなと。そうすることでミュージカルに興味を持ってくださる方も増えると思いますし、それは私が元アイドルだからこそできることなのではないかと思います」

取材・文:野上瑠美子


〈プロフィール〉

2012年にアイドルグループ・乃木坂46の1期生としてデビュー。グループのキャプテンとして活躍し、惜しまれながら19年9月にグループを卒業。卒業後は、ミュージカル『ダンス・オブ・ヴァンパイア』や『フラッシュダンス』、ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season3に出演するなど、活躍の場を広げる。近年の主な出演作に、【舞台】『ボニー&クライド』(25)、『HYPNAGOGIA~ヒプナゴギア~』『この世界の片隅に』(24)、『ジキル&ハイド』『ファースト・デート』(23)、【映画】『REQUIEM~ある作曲家の物語~』(25)、【ドラマ】『プロ彼女の条件 芸能人と結婚したい女たち』シーズン3(25・BUMP)、『爆上戦隊ブンブンジャー』(24・EX)、『つづ井さん』(24・ytv)、『ぼくの人格シェアハウス』(24・KTV)、『夫を社会的に抹殺する5つの方法 Season2』(24・TX)、『灰色の乙女』(23・MBS/TBS)などがある。

Instagram / X / YouTube


〈公演情報〉

COCOON PRODUCTION 2026
『クワイエットルームにようこそ The Musical』

2026/1/12(月・祝)~2/1(日)
会場:THEATER MILANO-Za (東急歌舞伎町タワー6階)
ほか、京都、岡山公演あり

詳細はこちら