Bunkamura Produce
モーツァルト・オペラ・シリーズについて
2024年2月~始まったBunkamura Produce (当初はORCHARD PRODUCE) モーツァルトのオペラ・シリーズのコンセプトは、鈴木優人指揮の世界的古楽器オーケストラ、バッハ・コレギウム・ジャパンがピットに入り、世界的なアーティストに舞台美術を担当してもらうということにした。また、舞台美術を担当するアーティストが、通常の分担の枠を少し超えて、演出のコンセプトや、照明のデザインにも積極的に意見を出してもらって良いという考え方を、シリーズを通しての演出家である飯塚励生(Leo)さん、舞台監督の幸泉浩司さんと事前に確認をした。そして幸運なことに、毎回、ファッション界のトップランナーが衣裳を手掛けてくれる事になったことで、音楽の鈴木優人さん、美術、衣裳それぞれのクリエイティブスタッフが、演出家のLeoさんを交えて率直に意見を交換をして作り上げていく本シリーズのスタイルが出来ていった。
1作目《魔笛》の美術は画家の千住博さん、衣裳はCFCL代表兼クリエイティブディレクターの高橋悠介さん、2作目《ドン・ジョヴァンニ》の美術は現代美術作家の杉本博司さん、衣裳はARTS&SCIENCEのクリエイティブ・ディレクターであるソニア・パークさんのディレクションの下で、スウェーデン出身のウィリアム・オウェソンさんに手掛けていただき、それぞれに個性の生きるプロダクションを創り上げていただいた。
千住博さんは、最後までベストを追求するという考え方で、初日が開けても、映像の手直しを続けていた。ご自身の描いた森や夜空の絵を基調にした自然を背景にした夜の女王と、大都会に君臨するザラストロを対比させ、その中でタミーノとパミーナが人として成長していく姿を描くこととなった。そのため高橋悠介さんとのディスカッションで、衣裳は白から始まり、赤・青それぞれのストライプを経て、赤と青(それぞれ動脈と静脈を表す)になることで成長を表現することとした。


杉本博司さんは、モーツァルトと同時代に生きたG.B.ピラネージの版画をモチーフに使い、その理由を、モーツァルトもイタリアへ旅した当時にピラネージの版画を見ている筈と述べていた。そして立体的な装置として様々な場面を彩った柱は法隆寺の列柱を模したものであった。法隆寺の柱はなぜかギリシャ神殿の柱などに見られるエンタシス(中央が少し膨らみをもった形)になっているという説があり、そのためか西洋のオペラと法隆寺の柱が良くマッチして見えた。ウィリアム・オウェソンさんの作る、シェイプは18世紀、素材はシンプルといった衣裳に、ソニア・パークさんがピリっと刺激を加える小道具を足してくださったのも印象的であった。



そして今、まさに第3作目の《フィガロの結婚》を制作している最中である。
《フィガロの結婚》の冒頭は、結婚を控えたフィガロが伯爵から新婚用にもらった部屋で、「ベッドが収まるかな」と、「5・・10・・20・・・」とつぶやきながら寸法を測る場面から始まる。その場面を見ているうちに、今回は是非、世界的建築家の隈研吾さんに美術を依頼したいという思いが強くなった。東急とも様々な仕事をしている隈研吾さんは幸いにも快諾くださり、衣裳デザインも丸山敬太さん(KEITAMARUYAMAデザイナー)に引き受けていただいて、制作が進行中である。
隈研吾さんが2010年に新装なったザ・キャピトルホテル東急の外観、エントランス、メインロビーなどのデザインを手掛けてくださっていることから、演出家のLeoさんとアイディアが膨らみ、キャピトルホテルのロビーを象徴する斗栱のデザインを基調にした舞台装置で、ホテルを舞台とすることとなった。シリーズ初の「読み替え」演出である。
伯爵夫妻は裕福なホテルのオーナー夫妻、フィガロはその部下、フィガロの婚約者スザンナはホテルの有能なコンシェルジュ・・という具合になる。丸山敬太さんとは、現代を舞台にするとしても、リアリスティック過ぎない、ファンタジーを感じさせるデザインにしようかなど、まだまだディスカッションは尽きない。
これまでの経験で、最高峰のアーティストの方々は常に予想を超えてきてくださると感じさせられてきたが、第3作の《フィガロの結婚》も、きっと想像を超えた作品に結実することを信じてクリエイティブ・スタッフの皆様の作業を見守る日々となっている。
文:プロデューサー 児玉晶子
写真:©K.Miura
公演日程
2026/2/19(木)16:00開演
2026/2/20(金)16:00開演
2026/2/22(日)14:00開演
2026/2/23(月・祝)14:00開演
会場:めぐろパーシモンホール 大ホール
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