深く知り、さらに楽しむウェブマガジン

今さら聞けない!シェイクスピアの作品が時代や国を超えて愛される理由は?

16世紀末から17世紀にかけてイギリスで活躍し、多くの名作戯曲を残した劇作家ウィリアム・シェイクスピア 。彼が手がけた作品は現在も世界各地の劇場で上演されています。「名前は知っているけど彼の作品の舞台にまだ足を運んだことがない」という方のために、シェイクスピアの作品がこれほどまでに時代や国を超えて評価され愛されている理由に迫ります。

シェイクスピアは存在しなかった?
まことしやかにささやかれる別人説

シェイクスピアは1564年にロンドンの北西に位置する田舎町ストラットフォード・アポン・エイヴォンで商人の息子として生まれました。18歳で結婚してから数年後にはロンドンの演劇界に名を現し、俳優兼座付作家として活躍。『ヘンリー六世』『リチャード三世』 などの歴史劇、『ハムレット』『オセロー』『マクベス』『リア王』などの悲劇、『ヴェニスの商人』『から騒ぎ』などの喜劇、さらに悲恋物語『ロミオとジュリエット』など、幅広いジャンルの戯曲37編を創作しました(40編という説もあり)。

ウィリアム・シェイクスピア(1564‒1616)

一方、こうした華々しい活躍に反してシェイクスピアの生涯に関する記録には空白部分が多く、また彼の戯曲に見られる外国・語学・歴史・法律などの専門的かつ幅広い教養について学んだり経験した形跡が残っていないことから、「シェイクスピアは匿名の人物によるペンネーム(あるいはシェイクスピアが代理人)だった」という別人説も古くからささやかれています。その候補として、フランス大使を務めていたヘンリー・ネヴィルや哲学者フランシス・ベーコンなど、当時を代表する知識人たちが挙げられています。

井上ひさしが『リア王』『ロミオとジュリエット』『リチャード三世』『ハムレット』などシェイクスピアの名作を複雑かつ絶妙に織り込んだ『天保十二年のシェイクスピア』。2005年には蜷川幸雄が演出し、シアターコクーンで上演しました。

人生の真理を描く普遍性こそが
シェイクスピア作品の醍醐味

シェイクスピアの戯曲は商業演劇が盛んだった当時のロンドンでもずば抜けて上演回数が多く、現在も世界中で毎日のように公演が行われています。その大きな要因は、彼の作品の“普遍性”にあります。
シェイクスピアが紡いだ物語は、生と死、愛と憎しみ、出会いと別れ、権力、復讐など、人類が長い歴史の間で繰り返してきた営みが取り上げられ、今も昔も変わらない本質的な感情や心理がベース。しかも、人生に対する洞察が深く掘り下げられているため、どんな国や時代に上演しても人々の理解や共感を得やすく、心に響くのです。また、シェイクスピアが創作活動を行ったのは16~17世紀のイギリスですが、彼の物語の多くは当時のイギリスを舞台とせず、遠い外国や過去を舞台にしたものばかり。そのため、舞台となる国を変えたり時代・文化の設定をアレンジしやすいのです。
さらにシェイクスピアは、教養の高い王侯貴族から庶民まで、さまざまな階層の人々を楽しませようとして戯曲を書きました。そのため、いかようにも解釈できる余地と懐の深さが作品に備わっていて、役者や演出家たちにとってはチャレンジしがいのある題材でもあります。原典を忠実に再現するだけでなく、『リア王』をモチーフにした黒澤明監督の映画『乱』のように大胆に翻案した例も数多く、今年のBunkamura主催公演だけでも、キャスト全員が男性(オールメール)で関西弁を話す『泣くロミオと怒るジュリエット2025』を7月に上演したり、優れた海外戯曲を今日的な視点で上演する「DISCOVER WORLD THEATRE」シリーズの最新作『リア王』(2025年10月9日からTHEATER MILANO-Zaで上演)では大竹しのぶが主人公のリア王に扮します。

気鋭の劇作家・演出家の鄭義信が手掛ける『泣くロミオと怒るジュリエット』は、台詞が全編関西弁、キャストが全員男性という異色作。関西の戦後の港町を舞台に、人種間や国と国との差別・格差などの普遍的なテーマを巧みに織り込んでいます。

見る者の人生を変えるかもしれない名台詞

そしてシェイクスピア劇の魅力として、人間や人生の真理を突いた“心に響く名台詞”も忘れてはいけません。『ハムレット』の「生きるべきか死すべきか、それが問題だ」のように一度は聞いたことがあるもの、『リア王』の「『今が最悪』と言える間は、最悪ではない」といった示唆に富んだもの、『マクベス』の「どんなに長くとも夜は必ず明ける」のように心を震わせるもの…。鑑賞する人々に深い感銘を与えるとともに、自分自身について考えるきっかけにもなる、ひねりの利いた台詞にも注目しましょう。もしかしたらその中の1つが、あなたの人生を変える格言になるかもしれません。

シェイクスピア劇の名手サイモン・ゴドウィンが2019年にシアターコクーンで日本初登場を飾った『ハムレット』。トニー賞ノミネートのセット・衣裳デザイナー、スートラ・ギルモアと組み、ダークファンタジーな舞台を魅せました。

長く愛され続けてきた物語には、やはりそれだけの魅力が備わっています。演劇の古典であり最高峰であるシェイクスピア劇を、まずはストレートプレイで体感してみませんか。


〈公演情報〉

Bunkamura Production 2025
DISCOVER WORLD THEATRE vol.15
『リア王』
NINAGAWA MEMORIAL

2025/10/9(木)~11/3(月・祝)
THEATER MILANO-Za (東急歌舞伎町タワー6階)

詳細はこちら