深く知り、さらに楽しむウェブマガジン

第7回「き」

クラシック音楽、演劇、アートなどには独特の専門用語が使われていて、知っておくと文化芸術をもっと楽しめるようになるものがたくさんあります。そうした用語の数々を、誰かに話したくなるようなトリビアを交えて解説する「Bunka Dictionary Bunka辞典」。第7回は「き」です。

【記譜法】きふほう/音楽/日本語

「記譜法」とは、文字や記号などを用いて音の高さや長さを指定し、音楽を書き表す方法。つまり、楽譜の記し方のことです。楽譜といえば五線譜が頭に思い浮かぶと思いますが、実は楽譜は最初から五線譜だったのではなく、記譜法の進化によって誕生したものなのです。

クラシック音楽の始まりは中世のグレゴリオ聖歌(ローマ・カトリック教会の典礼で歌われる聖歌)とされ、曲はネウマと呼ばれる記号を用いて記譜していました。初期のネウマ譜には譜線がなく、曲線や点でメロディの動きだけを示すものでした。10~11世紀ごろから譜線を引いて音の高さも表すようになり、最初は1線だけだったのが、音の高さをより正確に示すため線の数が次第に増加。さらに12~13世紀ごろにはモード記譜法や計量記譜法など音の長さを表す記譜法が誕生し、最終的に5本の譜線をもつ楽譜に落ち着いたのです。

【キャットウォーク】Catwalk/音楽・演劇・ミュージカル/英語

「キャットウォーク」と聞くと、ファッションショーでモデルが歩く細長いステージを思い浮かべる方もいるのでないでしょうか。実はこのキャットウォークという言葉はそれ以外にも、音楽や演劇など舞台関係の用語としても使われています。

「Catwalk」という英語のスペルが示すように、もともとキャットウォークとは高い場所にある猫の通り道のこと。それが転じて、ステージを照らす照明や演出用に吊るすバトンなどの設備点検・調整のために、客席や舞台の天井裏をスタッフが歩く細い通路をキャットウォークと呼ぶようになったのです。幅は大人が一人通れる程度で、高さは舞台から5〜7mほど! 転落防止のための安全対策はしっかりと施されていますのでご安心を。

【切穴】きりあな/演劇/日本語

「切穴」とは文字通り、舞台の床を切り抜いた方形の穴を指す舞台用語。もともとは歌舞伎を上演する劇場につくられたもので、普段は蓋で閉じられていますが、必要な時に蓋を取り除いて奈落(舞台や花道の床下にある空間)から出入りできるようになっています。

ちなみに、切穴の床を上下に昇降させる舞台機構を「迫り(せり)」と呼び、役者がせり上がってくる演出や大道具の登場などに活用。面積の大きい迫りを「大迫り」、小さい迫りを「小迫り」、花道にある小迫りは「すっぽん」と呼ばれています。現在の迫りは電動式が一般的ですが、江戸時代は人力で昇降させていました。

【切戸口】きりどぐち/能楽/日本語

能舞台の右奥にある若竹が描かれた壁下のあたりをよく見ると、何やら小さな戸があります。これは「切戸口」と呼ばれるもので、舞台裏から出入りするためのくぐり戸です。演者や囃子方は橋掛かりの突き当たりの揚幕から出入りしますが、地謡(じうたい:謡曲の地の文の部分を謡う人)や後見(こうけん:舞台進行を監督したり演者をサポートする役)はこの切戸口から出入りします。また、役を演じ終えた演者が目立たないよう退場する際にも利用します。 なお、切戸口という呼び名のほかに、斬られた武士の役を務めた演者がここから舞台を退くことから「臆病口」、また観客の目から遠くて目の届きにくいところから「忘れ口」という呼び名もあります。

【銀幕】ぎんまく/映画/日本語

映画の主役を飾る大スターを「銀幕のスター」と呼ぶことがあります。「銀幕」とは英語の「Silver Screen」を訳したものですが、なぜ銀幕という言葉がこうした形で使われているのでしょう? 銀幕(シルバースクリーン)とは、映画館で映像を映写するためのスクリーンを指します。昔のスクリーンは反射率を高めるため表面に銀皮膜を塗布していたことが由来で、それが転じて映画作品そのものを「銀幕」と呼ぶようになったのです。ただし、現在は銀を塗布しないホワイトスクリーンが主流となっているため「銀幕=映画」という用例が減り、「銀幕のスター」という表現もオードリー・ヘプバーンなど往年の名優の代名詞として使われています。