『Bunkamuraオフィシャルサプライヤースペシャル 未来の巨匠コンサート』2025年公演レポートをお届け!
9月7日に開催された『Bunkamuraオフィシャルサプライヤースペシャル 未来の巨匠コンサート』公演のレポートをお届けします。
2023年より再開され、今年で3回目の開催となる『Bunkamuraオフィシャルサプライヤースペシャル 未来の巨匠コンサート』。
Bunkamuraの活動を支えるオフィシャルサプライヤー各社の絶大なる支援のもと、次代を担う若い才能にオーチャードホール・フランチャイズオーケストラである東京フィルハーモニー交響楽団と共演する機会を提供し、更なるステップアップに繋げてもらおうという企画です。
今回は「情熱大陸」に出演するなどジャズ界以外からも大きな注目を集めるトランペッターの松井秀太郎(まつい・しゅうたろう)と、既に多くのオーケストラとの共演を重ね高い評価を受けるチェリストの鳥羽咲音(とば・さくら)が出演、ドイツの歌劇場などでの活躍で知られる指揮者キンボー・イシイとともにハイレベルな演奏を披露してくれました。
グリンカ:『ルスランとリュドミラ』序曲で軽快に始まったコンサート。続いて登場した松井が選曲したのはアルメニアの作曲家・アルチュニアンのトランペット協奏曲。多くの国際的トランペット奏者によって演奏されてきた作品ですが高い演奏技術を要する、奏者にとっては難易度の高い曲。松井は冒頭から輝かしいサウンドを繰り出し聴衆の気持ちを掴んでしまいます。“トランペットで歌うこと”を大切にしているという松井の言葉どおり、めくるめくような旋律を完璧な技巧で紡ぎだし、ホールを歌で満たしてくれました。見事なカデンツァ(トランペット・ソロ)に続く怒涛のフィナーレで鮮やかに曲を締めくくりました。

休憩をはさんで後半のステージに登場した鳥羽咲音が選んだのは、今年没後50周年のショスタコーヴィチ:チェロ協奏曲第1番。技巧的にはもちろん、この作品の持つ複雑で深遠な世界を表現するのはベテラン奏者にとっても至難の業ですが、鳥羽は気負いを感じさせない、しかし圧倒的な集中力とテクニックでこの難曲に切り込んでいきます。この作品ではホルンが重要なパートを受け持ちますが、こちらも素晴らしい演奏を聴かせてくれ、鳥羽を盛り立てます。ともすれば晦渋な作品と思わせる演奏も珍しくない中、彼女の若さでこの曲の魅力を引き出す能力は同年代の奏者中でも頭一つ抜け出していると言えるでしょう。情熱と知性を両立させた新時代の才能を感じさせてくれました。

現在の日本人演奏家のレベルの高さを改めて示してくれた松井秀太郎・鳥羽咲音。二人とも世界的なステージへとステップアップすることを確信させるコンサートとなりました。
写真:©K.Miura
『未来の巨匠コンサート』とは?
『Bunkamuraオフィシャルサプライヤースペシャル 未来の巨匠コンサート』は、オフィシャルサプライヤーの協力により1992年より2000年まで開催されました。
その目的は、
①若い才能ある音楽家を発見・支援・育成し、彼らを紹介すること。
②日本において彼ら音楽家たちの交流を促進させること。
③日本の音楽愛好家に新鮮で良質な演奏会を提供すること。
『未来の巨匠コンサート』というタイトルを冠したのは、彼らが21世紀を代表するような音楽家に育ってほしいという願いを込めてのものでした。
そんな『未来の巨匠コンサート』のDNAを受け継ぎ、2023年より新たにここ渋谷から世界に向けて若い才能を紹介するコンサートとして『Bunkamuraオフィシャルサプライヤースペシャル 未来の巨匠コンサート』が復活しました。
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