
コンテンポラリーダンス(ビギナーのための鑑賞ガイド ⑨)
コンサートホールや劇場で生のコンサートや舞台を体験してみたいけど、分からないことが多く、何となく敷居の高さを感じてしまう…。そうした不安を払拭して最初の一歩を踏み出すきっかけになるよう、初めて文化芸術を楽しむための入門知識をまとめた初心者向け企画「Start!Bunka ビギナーのための鑑賞ガイド」。第9回はコンテンポラリーダンスを楽しむコツや鑑賞時の基本的なマナーをご紹介します。
コンテンポラリーダンスとは?公演を選ぶポイントは?
ダンスとは、己の肉体だけを武器にさまざまなメッセージを踊って表現する舞台芸術。ダンサーの個性とスキルが最大限に発揮されるソロや、複数のダンサーが絶妙にシンクロした動きを魅せる群舞など、その躍動感と迫力はライブ空間でこそ体感できるものです。
ダンスは時代を重ねるごとにスタイルが細分化されていき、20世紀後半に新しく誕生したコンテンポラリーダンスは現在も世界中で広く流行しています。コンテンポラリーダンスは、バレエやモダンダンスといった既存の形式を土台にしながら、それを拡張したり、意図的に崩したりすることで発展してきました。作品には振付や構成が明確に存在し、無秩序な自由に任せるものではありません。その上で振付家やダンサーは、身体を通して時代や社会の問いに向き合い、新たな表現を模索してきました。さらに音楽や空間、照明といった舞台要素を重ねることで、観客にこれまでにない視覚的・身体的な体験を提示するのが大きな特徴です。明確な意味や答えを探すことにこだわらず、ダンサーが舞台で披露する創造性豊かな表現を五感で受け止めれば、理屈抜きで心を揺さぶられることでしょう。
こうした特徴もあって、コンテンポラリーダンスの公演は振付家や出演するダンサーによって「どんなダンスが見られるか」が大きく変わります。身体表現やメッセージ性へのこだわりが明確な振付家やダンサーもいるので、彼らのスタイルの特徴をあらかじめホームページや動画でチェックし、興味を引かれたり共感しやすいアーティストの公演を選んでみてはいかがでしょうか。そのように振付家やダンサーに関する情報を事前に得ておくと、彼らのパフォーマンスをより自然に受け取りやすくなるのでおすすめです。
また、コンテンポラリーダンスには世界に共通する定義がない一方、それぞれの国において自国の文化や音楽の影響を多かれ少なかれ受けています。バレエ団などを母体として従来のダンスに新しい要素を加えた集団的芸術を特色とするヨーロッパ、サンバなど華やかなダンスの要素を取り入れているラテンアメリカ、モダンダンスや日本舞踊など多様なスタイルを自由に和洋折衷する日本など、国ごとの特徴に注目すると鑑賞の楽しみがさらに広がります。
コンテンポラリーダンス公演での座席の選び方は?
会場の規模や造りにもよりますが、コンテンポラリーダンス公演の座席はそれぞれの場所によって見え方に特徴があります。ダンサーとの距離が近くて細かい振付がよく見え、踊りの迫力と臨場感を味わいやすい1階前方。ステージ全体が視野に入り、体全体の肉体表現をトータルで鑑賞しやすい1階後方。ステージ全体を俯瞰し、群舞のフォーメーションが把握しやすい2~3階席。斜め方向から見下ろす形になりますが、独特の角度から舞台を俯瞰できるバルコニー。何度か劇場に通い、自分好みの席を探してみてください。
また、会場へのアクセス・経路・所要時間なども事前に調べておくと、当日に心の余裕を持って鑑賞に臨みやすくなるでしょう。
コンテンポラリーダンス公演での鑑賞マナーは?どんな服装で行けばいい?
上演中は他のお客様の鑑賞の妨げにならないよう、おしゃべりなど音を出す行為は控えましょう。また、携帯電話やスマートウォッチが発する光も意外と気になるもの。他のお客様だけでなく踊り手の集中力を妨げる要因にもなるので、携帯電話など音や光の出る電子機器の電源は切っておきましょう。補聴器をお使いの方は、開演前に正しく装着されているか確認することをおすすめします。前のめりに座ると後方のお客様の視界をさえぎることになるので、座席の背もたれに背中を付けた状態で座りましょう。なお、客席内での飲食、撮影・録音・録画は禁止です。他にも分からないことや鑑賞中に困ったことがあれば、案内スタッフに相談してみると良いでしょう。
もう1つの鑑賞マナーとして服装について気になる方もいるでしょうが、コンテンポラリーダンスの公演にはドレスコードはありません。長時間座っても疲れないよう普段から着慣れたカジュアルな服装で大丈夫です。なお、周囲の方への配慮のため、帽子は上演中には脱いで、香りの強すぎる香水は避けた方がよいでしょう。
会場で快適にお過ごしいただくために/チケット購入方法
公演当日に最低限必要なものはチケットですが、会場内の空調の寒暖の感じ方には個人差があるので、ショールやカーディガンなど軽く羽織って体温調整を行えるアイテムや、咳やくしゃみが出てしまう時に口元を押さえられるハンカチもあると便利。他にも、踊り手の表情や仕草まで細かく観察できるオペラグラス、公演前後に購入したグッズを入れるエコバッグなど必要に応じて持参しましょう。
チケットは、おもに各プレイガイド、公演会場チケットカウンター、主催者ホームページなどで販売されます。販売方法は公演によって異なるので、詳しくは主催者のホームページをご覧ください。Bunkamura主催公演では、オンラインチケットMY Bunkamuraをはじめ、Bunkamuraチケットカウンター(現在休業中)・東急シアターオーブチケットカウンターまたは各プレイガイドでのご購入、電話でのご予約が可能です(詳細はBunkamuraチケットガイドでご確認ください。)。公演によっては学生向けのシートや料金を用意しているものもございますので、こちらも公演のホームページでご確認ください。また、残席状況によっては会場で当日券が販売される場合があるので、事前販売でチケットが完売になってもあきらめず公演ホームページをチェックください。