
「formation 12」
2010年 36×36cm
ニューヨークを拠点に制作活動を続ける市村しげのはアートコンペティション最大クラスのひとつ「テキサス・ナショナル」にて、アジア人として初となる第2位で入賞。2002年、New York芸術基金よりフェローシップを受賞、その後もニューヨークを中心に国内外で多数の発表を続けている。本展では作家生活25周年を記念し、ライフワークである2つのコンセプトで展開を図る。
『Silver mono-chrome』シリーズは、不要な彩色が全て排除された、冷たく重厚感があるシルバー単色のキャンバスに凹凸のみで描かれる。
作家は視覚可能な最小単位を「点(ドット)」と考え、光に反射する「点」=「個」を使って表現することにより、光と時間と観る者の相対性を浮き彫りにしようと試みている。
小さな点が集まり群れとなり、大きな円へと拡大していく。点はその集合体のなかの小さなひとつ。それぞれ光を受け、反射し、影を纏い、「個」を主張し、まるで予測出来ない人間の動き=フラクタルであり、その存在してきた時間や文明を具現化しているかのようである。
『Time Compression』シリーズは、錆付により制作された作品群。作家の意思で錆は進行と中断を繰り返し、一つ一つのピースが「時の流れ」を象徴する「個」として成立させられている。作品は各々「時の流れ」が存在するが、複数のピースを並べ見る時、時間軸を通して相対的な関係が生まれる。見る側にとっては内的時間軸、いわば記憶との対峙を求められる。
昨今ヨーロッパを中心としたアート市場では戦後日本の抽象表現作家に注目と評価が高まっている。ポスト戦後世代であり、既に現代美術の中心地であるアメリカで数多くの個展・グループ展を開催、評価を確立してきた期待の作家・市村しげの。
彼の全貌に迫る本展にご期待ください。