リアルとイメージが揺らぐ白銀の世界
山田純嗣の作品づくりは「絵画とは何か」という問いから始まります。名画をモチーフとし石膏で作った立体を、さらにインタリオ・オン・フォトという独自の技法で平面にすることにより完成させた作品は、その一つ一つの工程が画面の中で重なり合って見え、絵画と自らの立ち位置・視点を次々に転換する運動を誘発します。
乱反射した柔らかい光と影で構成されたような画面はまるで白銀の世界。引き込まれるままにじっと見つめると、写真なのか版画なのか絵画なのか判断に戸惑い思考が揺らぎます。人が絵を見て感動するのは物質そのものにではなく、その人の中にあるもの、その人の経験が描いた≪絵≫が呼び起こされるからではないでしょうか。内部化した≪不在の理念としての絵画≫と、それを呼び起こす装置である≪物質としての絵画≫の間を往復し見つめることで作品世界のより深いところに触れられるようです。
2007年Bunkamura Art Showでの出展以降、国内外で多数の評価を得、この度Bunkamura Galleryでは初となる待望の個展を開催いたします。日月山水図屏風をモチーフとした未発表の作品や、モネの睡蓮をモチーフとした穏やかな色調が美しい連作など、新作、近作を中心に展示・販売いたします。会期に併せて作品集も新たに刊行。インスタレーションも行い空間全体で魅力をお感じいただけます。美術の本質を体現する山田作品にぜひご期待ください。
掲載作品
「WATER LILIES」
2013-2014年
ポリコートパネル、印画紙、樹脂、パールペイント、ラメ、インタリオ・オン・フォト
189×194cm
≪作品の制作工程≫
モチーフを石膏などで立体に起こしたものを写真撮影し、プリントする。
プリントした写真にトレーシングペーパーを重ねドローイングし、PCにスキャン。転写紙を銅版に重ね転写後、腐食・エッチングを重ねて版を作成(=インタリオ・オン・フォト)。
印刷紙に刷り、それをパネルに仕立て、樹脂や一部彩色などを施す。
≪アーティストレクチャー開催≫
開催日:8/22(土)
開催時間:14:00~(1時間程を予定)
会場:Bunkamura Gallery
写真、版画、ドローイングなど様々な技法を組み合わせる「インタリオ・オン・フォト」について作家よりレクチャーいただきます。技法を学ぶことで、アート作品への理解をより深めることができる貴重な機会です。
※事前予約不要
※上記の時間に直接Bunkamura Galleryへお越しください。
≪作家在廊日≫
8/22(土)・8/23(日)・8/29(土)・8/30(日)
≪待望の初となる作品集刊行≫
作品集「山田純嗣―絵画をめぐって―」普及版および、オリジナル作品付限定特装版を販売いたします。