プルートゥ PLUTO

TOPICS
トピックス

2018.02.11 UP

欧州ツアー開幕!初日公演レポート到着しました!

【初日公演レポート】


2月8日夜、『プルートゥ PLUTO』欧州ツアー最初の公演地であるロンドンのバービカン・シアターで、初日の幕があいた。世界的に活躍している演出・振付のシディ・ラルビ・シェルカウイ(ベルギー出身)は、ダンサー・振付家としてロンドンでもよく知られた存在だが、バービカン・シアターには初めての登場。そして『プルートゥ PLUTO』の原作であるまんがというカルチャーは、いまや世界中で認知され普及しているものの、イギリスにおいては、関心が低いという現状がある。"演劇の国"を自負する地で、日本語上演・英語字幕によるまんがの舞台化は、どう受け止められるのか。不安が期待を上回るなかで開演を迎えた。

 


1152席の客席は満員。年齢や男女の比率もバランスが取れている。日本の上演では無かった英語字幕が、原作まんがの画像を多用した装置の中に、舞台美術のデザインのように溶け込んで表示され、まさしく"まんが"になっているのが印象的だ。観客は非常に集中度が高く、反応も明快で、ウラン(土屋太鳳)のお茶目で豊かな表情に笑い、子ども型ロボットが「パパ、ママ」とあどけなく話すと、驚きと慈しみの混じった歓声が漏れ、某国大統領のブレーンである、テディベア型の高性能ロボットのあっけない最期には、大爆笑が起きた。

 

 

 

日本とは異なるリアクションにシェルカウイは、

「いずれも僕がおもしろいと思っていた箇所が大受けして、うれしい限りです。バービカン・シアターは海外の多様なカンパニーの作品を上演する劇場のせいか、観客がとてもオープンな姿勢ですね。深く作品に共感してくれている様子が、手に取るように伝わってきました」

と確かな手応えを感じていた。

 

刑事ゲジヒト役の大東駿介は、

「イギリスは世界でもっともまんがを読まない国と聞いていましたけど、原作を知らなくても、十分わかってもらえましたね。原作の浦沢直樹さんとも話したんですが、まんがにはなじみが無くても、まんがを舞台化した演劇『プルートゥ PLUTO』から、イギリスの人たちがまんがへの興味を持ってくれるようになったら、おもしろい展開になるぞと思いました」

 

好反応の初日を終えた直後で、興奮と安堵が漂うなか、アトム役の森山未來は、

「日本ではストーリーを知ってる人も多く、シリアスに観る傾向がありましたけど、こちらの人たちは、フランクに観てくれている感じですね。僕たちとしては、環境が変わって、キャスト・スタッフのクルー全体がいい緊張感をもってできたので、今日はよかったと思います。ただ字幕とせりふの関係性について、もう少し考えていった方がいいと思うんですよね」

と、いたって冷静に、次の課題に意識が向かっている様子。

 

ロンドンで5公演を終えると、次はオランダ・レーワルデン、ベルギーのアントワープと欧州ツアーは続く。3月の大阪公演までに、『プルートゥ PLUTO』はまた、目覚ましい進化を遂げそうだ。

文:伊達なつめ(演劇ジャーナリスト)

画像©浦沢直樹×手塚治虫 長崎尚志プロデュース 監修・手塚眞 協力・手塚プロダクション/小学館 鉄腕アトム「地上最大のロボット」より 『プルートゥ PLUTO』(2018)