るつぼ

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2016.10.07 UP

初日コメント&舞台写真到着!

『るつぼ』演出家のジョナサン・マンビィ氏と出演者の皆様からコメントをいただきました。

【演出家 ジョナサン・マンビィ】
数週間にわたる東京での稽古を通して、ミラーの傑作戯曲である『るつぼ』は言語や文化の違いを超越して、私達の心にまっすぐに語りかける作品だということが分かりました。人間とは何か・・・人を愛する気持ち、憎む気持ちは普遍的であり、言語や文化、時代を超えて共感できるものであるということを証明している作品です。
この戯曲は、ミラーが彼自身が生きた時代に呼応して書いたものであり、だからこそ、今、この私達の時代にもまっすぐに語りかけます。私達は、政治と宗教の過激主義、そして恐怖や疑いのたちこめた時代を生きているのです。ミラー自身が書いているように、彼の戯曲は「激しい嵐に向かって突き進み、語りかけ」ます。私達を奮い立たせ、訴えかけてくると同時に、私達はそこから多くのことを学ぶことになるでしょう。
素晴らしいキャストの皆様がいなければ決して成し得なかったこのプロダクションを、私は心から誇りに思っています。日本の最高の俳優達が集まったカンパニーで、私は彼らの才能、寛大さと情熱に圧倒されました。彼らは真実の感情を心に突き刺すことのできる俳優で、私は毎日感動させられていました。また、東洋と西洋がコラボレーションしたクリエイティブチームの素晴らしい作品を皆様にお見せできることにも、非常に興奮を覚えます。
この示唆に富んだミラーの戯曲に突き動かされ、東洋と西洋の融合した"ハイブリッド”なチームは、想いをひとつにし、明瞭に、そして魂をこめてこの物語を語るべく稽古を重ねて来ました。驚くべきほどに美しい作品を、このチームのおかげでつくることができました。
ずっと演出してみたいと思っていたこの戯曲を、今、こうして皆様にお見せできることをとても嬉しく思っています。皆様が今夜の公演を、そしてミラーの時代を超えた素晴らしい戯曲を楽しんでいただけることを願います。
私にとって、とても特別でそして思いが詰まったプロダクションです。この公演は、木々の葉が落ち季節が変わってもずっと私の心に生き続けるでしょう。

【ジョン・プロクター役 堤真一】
演出のジョナサン・マンビィ氏は、稽古の初期にワークショップを開いたり座学で作品の背景を学んだりというやり方でしたので、作品の共通認識を持って稽古に臨めました。
いよいよお客様に観ていただける日を迎え、ほど良い緊張感の中にいます。
人間の愚かさや欲望、罪の意識や不安感といったものが透けて見えてくる舞台にできればと思います。
今こそ、ぜひ観ていただきたい作品です。劇場でお待ちしております。

【エリザベス・プロクター役 松雪泰子】
初日を前に、今は緊張感と高揚感の中にいます。
稽古中は、ジョナサンと共にアーサー・ミラーの戯曲の世界を綿密に理解して表現する為の時間を沢山過ごしました。ジョナサンは、私達が理解し体現出来る道筋を示し導き続けてくれていました。
先輩方から沢山学ぶ事もあり、素晴らしい現場です。このカンパニーの一員として表現出来る事をとても幸せに感じています。
全員でしっかりと集中力を持って、セイラムに生き、そしてこの物語の本質を届けられる様にカンパニー全員で挑みたいと思ってます。

【アビゲイル・ウィリアムズ役 黒木華】
いよいよ初日です。
稽古の日々があっという間に過ぎていきました。
ジョナサンさんの稽古は毎日学びや、発見が多く、まだまだ探している最中ですが、観に来てくださるお客さまと一緒に、色々と見つけていければと思います。
共演の皆さまも本当に素晴らしい方ばかりですし、マイクさんの舞台装置、衣裳…この中にいられる事、また、この「るつぼ」という戯曲を一緒に創れる事が幸せです。
アビゲイルを含めた少女達も、(黒田)育世さんの刺激的な振り付けで力強く生きています。
その部分も楽しんでいただけたら嬉しいです。

【ジョン・ヘイル牧師役 溝端淳平】
世界的に傑作と言われるこの戯曲は、稽古を重ねながら新しい疑問や発見が多々ありました。
遠いようで凄く普遍的なテーマが詰まっていると思います。
今の僕たちが今の日本の方々に誠実に届けられればと思います。
ジョナサンはとても紳士で僕の役の素朴な疑問にも真剣に向き合ってくれました。
いい意味で日本的ではない俳優との距離がとても新鮮でありがたく、それがまたすべてを見透かされてるような怖さもありました。答がない演劇の世界で、すべてを否定せず肯定して能動的に取り組む姿勢は素晴らしい。欲を言うならもっとながく稽古をつけてもらいたかったです。
堤さん松雪さんをはじめ尊敬する大先輩の方ばかりだったので、
皆さんの胸を借りながら吸収でき、技術的なことや心情的なことも先輩方にヒントを
もらえるありがたい現場でした。



撮影:細野晋司