作・演出 赤堀雅秋

 実際にあった凄惨な殺人事件が題材ですが、作品のキーワードはむしろ「家族」だと思っています。最近、犯罪関連で報道される家族像には、共通して狂信的で歪んだ関係性が存在するように僕には思える。家族は最も身近にあって互いを理解し、繋がり合っていて当然だという思い込み。それに反し現実には、個々人が埋めようのない距離を感じ、孤独に飢え乾いた状態にある。そこに生じる虚無と渇望に苛まれる人々を描き、最終的には舞台上に、喜劇として見える瞬間も現出させられたら、というイメージを今は持っています。
 八乙女さんとは初めてご一緒させていただきますが、トップ・アイドルとして活動しながら、他者に対して変に壁を作ることなくニュートラルに接することができる、その姿勢が一緒に芝居づくりをする仲間として信頼できると思いました。華やかな活動とは裏腹に、どこか自分の中にある根の暗さに自覚的なんじゃないか、と勝手に想像が膨らみました(笑)。
 大倉さんとは俳優同士での共演経験はありますが、演出家として向き合うのは今回が初めて。あの独特の佇まい、観客が絶対的な安心を持って観ていられる存在感は唯一無比の魅力。八乙女さんとの「兄弟」のバランスも良いと思うので、作品のために存分に力を貸してもらおうと思っています。

八乙女 光

 作・演出の赤堀さんとは、俳優として出演されている舞台『シダの群れ 港の女歌手編』を拝見したことが初対面の場でした。『シダの群れ』は任侠物で赤堀さんはヤクザ役。あまりの迫力と怖さに、家に帰って震えるほどでした(笑)。
 殺人事件を描く作品世界は非常にヘヴィーなものですが、考えてみると僕が初めてドラマ(『3年B組金八先生』)で演じたのは、虐待を受けていた薬物中毒の中学生という役。人間の暗部を演じることは難しいけれど、やりがいも大きく、さらに今回は喜劇的な要素も入るということで、そのハードルの高さに今からワクワクしています。
 また、音楽や歌のない舞台作品への出演は初めてのことなので、僕にとっては大きな挑戦になりますが、がむしゃらに、けれど楽しんで最後までやりきりたいと思っています!

大倉孝二

 僕自身が赤堀作品とTHE SHAMPOO HATのファンなので、あの独特の世界観に自分が入るということを、今まで想像できませんでした。でも今回は赤堀さんのシアターコクーン初進出作品。「手伝って欲しい」と言われ、断れませんでした。
 赤堀作品の魅力を一言で言うなら"ダサい男気芝居"。人間のみっともなさを敢えてむき出しに描き、「みっともなくて何が悪い!」と逆説的に認めさせてしまう、あのエネルギーは他にないものだと思います。
 作品概要に「一家四人殺害事件」というへヴィーな単語を見た瞬間、「キタか……」と思いました。稽古から本番まで確実に憂鬱な春になりそう(笑)。でも僕は、人から与えられないと重く大きな課題から逃げるタイプなので、良い機会をもらったと覚悟を決めて臨みたいと思っています。