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シス・カンパニー / Bunkamura PRESENT シアターコクーン・オンレパートリー2012

騒音歌舞伎(ロックミュージカル) ボクの四谷怪談

脚本・作詞:橋本治 演出:蜷川幸雄 音楽:鈴木慶一

2012年9月17日(月・祝)~10月14日(日) Bunkamuraシアターコクーン

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『ボクの四谷怪談』チームが「お岩さま」の墓参りで安全・成功祈願

一行は東京・豊島区西巣鴨の妙行寺にて「お岩様」の墓参りをした後、共に「お岩稲荷」と称されている、新宿区左門町の田宮神社と陽運寺にも参拝。お祓いも受けました。え、お岩様ってホントにいたの?と驚くかもしれませんが、ハイ、実在の女性なのです。もっとも、夫の民谷伊右衛門に裏切られ、恨みに恨んで化けて出る……という怪談でおなじみのストーリーは、あくまでフィクション。江戸時代の歌舞伎作者鶴屋南北が、実在の女性お岩さんの名前を借りて、当時起きた事件をいろいろ混ぜ込み、虚実ないまぜの物語に仕立てたのです。というわけで実際のお岩さんが非業の死を遂げた証拠があるわけではありませんが、いつしか『四谷怪談』上演の際には、ゆかりの地に参拝するのが慣例となりました。

作家・橋本治が文壇デビュー前に書いた幻の戯曲『ボクの四谷怪談』は、この南北版の骨格を活かしつつ、1970年代風ファッションに身を包んだ若者たちの青春群像劇になっています。「忠臣蔵」の仇討ちに加わる者、加わらない者、生きる目的を探しあぐね、迷い、焦り、右往左往する若者の姿は、時代を超えた鮮烈さをもって現代人の胸に迫ります。

「さまよう名刀が手に入った」

演出の蜷川幸雄は、過去に舞台と映画で二度ずつ『四谷怪談』を手がけています。「『ハムレット』のように何度やってもやり残した感覚がある」と語り、この作品に取り組むタイミングで「腐った時代がときどき廻ってくる」という実感があるとか。1971年の上演時には急進的な政治運動から転落していく若者を、2001年にはバブルが弾ける中で転落する若者を主人公たちに重ねました。そして「明確な敵も見えず、ふわふわとした中に明るい地獄絵がある」と捉える今という時代に、蜷川はどんな現代性を見出そうとしているのでしょうか。「『四谷怪談』を軽やかに解体した、橋本さんの戯曲と巡り会ったのも何かの因縁。それこそ歌舞伎じゃないけれど、さまよう名刀が手に入ったような気分です(笑)。今までとは違うものを、新しい人たちとも一緒に、自由に奔放に作っていきたい」。

そして全編を彩るのが、日本語ロックの先駆的存在、ムーンライダーズの鈴木慶一による音楽!台本には曲調や使用楽曲などの事細かな指定もあり、70年代色が濃厚に匂います。ト書きの詳細な指定は曲作りに制約を与えたかと思いきや、「橋本さんの言葉のリズムがいいので、すごくやりやすかったですよ。世代も近く、聞いていた音楽も共通しているはず。橋本さんの頭に響いていたであろう音楽を想像しながら作りました」と、曲作りはスムーズだった様子。そしてアレンジには「ロックの“隠しアイテム”がたくさん入っています」という聞き逃せない発言も。「ウッドストック」世代のみならず、音楽好きなら思わずニヤリとするようなスパイスが効いています。全体的に『四谷怪談』のイメージには一切とらわれず、「まったくのロックです!」と言い切るご本人。切なくてポップで心ざわつかせる鈴木流ロックサウンドを、キャスト陣がどう体現してくれるのか。どうぞご期待ください!

文:市川安紀
写真:小林由恵