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パリの旧市街マレ地区。マティアスは父親が亡くなり、相続したアパルトマンを売りにやってきた一文無しのニューヨーカー。アパルトマンは部屋数が多く、しかも庭付きで、これは高く売れそうだと期待するが、誰もいないはずの部屋には老婦人マティルドが住んでいた。彼女が言うには、このアパルトマンは、フランス伝統の不動産売買制度「ヴィアジェ」によって、元の所有者であるマティルドが亡くなるまで売却できないうえに、マティアスは毎月2,400ユーロを年金のように支払い続けなければならない。頭を抱えるマティアスだが、さらに夜になって帰ってきたマティルドの娘クロエには、ヴィアジェを払わなければ不法侵入で訴えると脅される始末だ。何とか金策に走り、アパルトマンを売る機会を虎視眈々と狙うマティアスだったが、マティルドたちと暮らすうちに、秘められた彼の家族の歴史を発見してゆく。それは、亡き父のメッセージであり、彼の心の奥深くに刺さった傷を癒し、運命を変える新しいスタートだった──。
「ダウントン・アビー」でも人気を博す英国の大女優マギー・スミスと「ラストベガス」でも健在ぶりを示し、シェイクスピア劇の舞台俳優としても活躍する名優ケヴィン・クライン。さらに「サラの鍵」の感動的な演技も記憶に新しく、本作品でも相変わらぬ美しさを披露するクリスティン・スコット・トーマスが共演する豪華アンサンブルは、映画ファンなら見逃せない顔合わせだ。監督は『いちご白書』でカンヌ国際映画祭脚本賞を受賞したイスラエル・ホロヴィッツ。ブロードウェイの舞台劇として書き上げた戯曲を元に、自らの手で待望の映画化を成し遂げた。作家として長年培った鋭い人間観察眼と揺るぎないストーリー展開が物語に奥深さを与え、誰もが一度は抱えるであろう家族との葛藤や和解、そして、新しい人生のめぐり逢いの大切さを教えてくれる。パリの旧市街マレ地区のアパルトマンを舞台に、時にユーモラスに時に辛辣に繰り広げられる家族ドラマは、極上の演技と共に、大人の貴方の心にきっと響くはず。
~ヴィアジェとは?~
フランスに200年前から存在する独特の不動産売買システム。その特徴は、不動産を売却しても売主は亡くなるまで住み続けることができることで、買主は売主が亡くなるまで、毎月一定の金額をローンの代わりに支払い続ける。売主がすぐに亡くなれば、買主の負担は少ないが、長生きした場合には容易に不動産が手に入らないケースもある。実話として、売主が90歳の時にヴィアジェを契約したが、122歳まで生き続け、買主が先に亡くなったという嘘のようなホントの話がある。