読んでおいしいTHE WINE

2025.02.26 UP

第2回:全部飲みたくなる! ワインの種類あれこれ

 ワインの原料は畑で穫れたブドウのみ、こんなシンプルなお酒はほかにありません。それなのにいろいろな種類があるのが面白いところ。ブドウ果汁をアルコール発酵させたものがワインなのですが、見た目だけでも赤や透明、ピンク色や黄色、シュワシュワと泡が出ているものなど多彩。口に含むと酸味や渋み、甘みといった味覚の要素があり、スルスル飲めたり、重厚な雰囲気をもっていたりと、ひとつとして同じワインはありません。

 

 ワイン用のブドウには黒ブドウと白ブドウの2種類があります。「赤ワイン」は、黒ブドウの皮や種と一緒に浸け込んで発酵させるので、皮の色素が果汁に移って赤い色になります。一方、「白ワイン」はまず白ブドウを搾って、果汁だけを発酵させたもの。ブドウの皮や種には渋みのもとになるタンニンが含まれているため、赤ワインには独特の渋みがありますが、それがない白ワインは、酸味や果汁のフレーバーをよりダイレクトに感じられます。ピンク色の「ロゼワイン」は赤ワインと同じ黒ブドウから造られます。少しの期間だけ皮や種と一緒に醸すので、赤よりは色が薄く、すっきりとした味わいになります。では、最近目にすることの多い「オレンジワイン」とは? その色を称しオレンジと呼ばれていますが実は白ブドウが原料なので、厳密にいうと白ワイン。白ブドウを、赤ワインのように皮や種とともに漬け込んだ状態で発酵させることで、白ブドウの皮に含まれる色素が果汁に溶け出して、オレンジ色に見えるのです。皮や種と果汁が接触する期間が長ければ相応の色がつき、タンニンも抽出されます。白ワインにはない渋み、ときに旨みを伴った深みを感じるのはこのため。さまざまな料理と合わせられるので、レストランのペアリングでも活躍しています。

 


 シャンパーニュやクレマンと呼ばれる「スパークリングワイン」は、発酵過程で生まれる泡が溶け込んだワイン。甘口ワインは製法により多様な種類がありますが最高峰は、ボトリティス・シネレア菌(貴腐菌)の働きで糖度が劇的に上がった粒から造る「貴腐ワイン」。甘みと酸味のバランスが絶妙です。ユニークなのは、世界でもフランスのジュラ地方だけで造られる「ヴァン・ジョーヌ(黄色いワイン)」でしょう。白ワインの液面に酵母の膜が張った状態で最低6年間の長期熟成をさせることで色濃く、芳醇で複雑な風味に。フランスが誇る名ワインのひとつなので、見かけたらぜひ試してみてください。「こんなワインがあるんだ!」と驚いて、もっといろいろ飲んでみたくなるはずです。

 

■今回の“おいしい”フランスワイン

独特な風味にやみつき“黄色いワイン”
アルボワ・ブラン ヴァン・ジョーヌ 2015 / ロレ 620ml ¥10,120 
産地:ジュラ ブドウ品種:サヴァニャン
アーモンドやガラムマサラ、紹興酒のような複雑な要素もある唯一無二の味わい。独自の形状のボトルも個性的。スパイス風味のポークソテーと相性◎。


ナチュラルでクリアな甘みにうっとり
ピノ・グリ ラ・ドモワゼル 2015 / ドメーヌ・マルク・テンペ 500ml ¥8,470
産地:アルザス ブドウ品種:ピノ・グリ
ドライフルーツや栗のハチミツのナチュラルな甘み。貴腐菌が付いたため甘口にした、自然栽培の名手による貴腐ワイン。フルーツのデザートとともに。

※記載価格は2025年1月時のものです

 

本連載はBunkamuraドゥマゴ文学賞が発行する小冊子「LES DEUX MAGOTS PARIS Littéraire」にて掲載しています。


取材・文:谷宏美

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