私のBunkamura文学賞

推薦書籍

No.9

『ピンヒールははかない』佐久間裕美子 幻冬舎

SPBS本店 粕川ゆき

『ピンヒールははかない』佐久間裕美子 幻冬舎

この本は、ニューヨーク在住のライター佐久間裕美子さんが、アメリカ生活で出会った女性たちとのエピソードと、そこから考え感じたことを綴ったエッセイ集だ。出版されたのは2年も前だが、当時私はこの本に興味を抱けなかった。見た目から、「目指せ!かっこいい女!」というスローガンのようなイメージを受けてしまい、自分には大きすぎるテーマだと怖気づいたからだった。けれど、読んでみてその印象は覆された。”かっこいい女”とは、”かっこいい生き様”なのだということに気づかされたからだ。

グレース、ひこちゃん、ジュディ、ラケル、メリアナ、ラーキン……そして佐久間さん。登場する女性たちが体験している物事は、自分には遠い話すぎて共感することが難しい。だから、そのポジティブな姿勢も真似できないことだらけだ。ただ、真似はできないけれど、「大丈夫だ」と思わせてくれる。変わらなければではなく、変わっていくから大丈夫と、そっと背中を支えてくれる。

この本を読んでいると、心を動かされる言葉に何度も出会う。中でも最終章のとある一文にたどり着いた時、涙が溢れて止まらなくなった。まるで壮大な物語のクライマックスを読んだ後のような高ぶりとともに、私が求めているのはこれだ!と、光が差したような気持ちになった。

これからも様々なことが起こるだろう人生の中で、また何度でも読みたくなるに違いない。

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