推薦書籍
No.69
『AはアセクシュアルのA』川野芽生 リトルモア
電燈 吉成彩奈
アロマンティック(他者に恋愛的に惹かれない)/アセクシュアル(他者に性的に惹かれない)の当事者によるエッセイ集。この社会を席捲し、わたしたちの多くも、程度の差こそあれ内面化している「恋愛至上主義」。そのただなかでの体験、傷つきと、思索が綴られている。
著者のことばは解像度が高く、研ぎ澄まされている。事象や問いを細分化し、噛んで含めるように丹念に説明するので、読み手の腑に落ちる。それは、著者がことばに長けているという以上に、生き延びるため、そうせざるを得なかった必死さのあらわれという気がする。
著者はきっと、社会のなかの“異物”でありつづけたために、自分が直面していること、内面の機微、社会との齟齬を、仔細に観察し、理解しなければならなかった。自分のままで生存するには、自分にたいしても、他者にたいしても、絶えず弁明するかのようにことばを尽くし、存在を証明し、自衛しなければならなかった。あたりまえのように恋愛をするひとが、あたりまえのように回避してきた手順と労力が、ここに結晶している。
著者は、血まみれで怒っている。わたしはここにいるよ、と呼びかけている。その切実な語りに圧倒されて、わたしは読み終えてからもずっと、たすけられている。
