推薦書籍
No.66
『それがやさしさじゃ困る』鳥羽和久 赤々舎
本屋・生活綴方鈴木雅代
昭和から平成、令和の間で変わった物事はたくさんあるけれど、体感として大きく変化したことは働きかたと教育だと感じている。
最近50代になった私と同年代の間では、「休職」という言葉が使われることはほぼなかった。しかし今、周りにいる年下の友人には休職経験者が多くいる。
「つらかったら休めばいい」と本気で思うけど、私が働きだした頃とは会社側の「配慮」がまるで違うようだ。
そして親子との関係も教育も、親の代、私自身が子を育てた時期、そして現在子育て中の人の話を聞いても、かなり違う。
この本は、彼の塾に通う子どもと親とのエピソードから、教育の現場を見つめ直したもの。ひとつのエピソードごとに、昔子どもだった私としては古傷を思い出し、現在の私は、大人としての態度や伝え方を考えさせられる。鳥羽さんが子ども達にかける言葉は、なぜか子どもの頃の自分にかけられているように響いてくる。本には答えなど載ってない。大人になってしまったさびしさを抱えながら、あちこちできた小さな綻びを、自分で繕うように読んだ。
