私のBunkamura文学賞

推薦書籍

No.64

『エリック・サティの小劇場』藤谷治 夕日書房

藤乃屋書店甲地 康代

『エリック・サティの小劇場』藤谷治 夕日書房(発売 光文社)

喫茶「ピカデリー」の風変わりな2人の常連客と喫茶店を遠くから監視する、サングラスに黒スーツの2人の男たち。そして、彼らの様子を見守るカフェ店員の僕。私達観客ももれなくカフェ店員の目線となり、小気味よく進む物語の世界にひっぱりこまれて行く事になります。
極秘調査や国家機密などの少しピリッとしたシーンも交えつつ、ラストに続くドタバタシーンは小劇場さながらです。
音楽家エリック・サティ没後100年を記念して執筆されたオマージュ作品で、ユニークかつおしゃれな喜劇を読む体験が味わえます。
サティといえば『ジムノペディ』が有名で、あのゆったりした不思議なピアノの空気感や、彼の変わった性格、歩んだ人生のエッセンスを抽出して、物語の雰囲気に混ぜ込んだような作品でした。
先が気になり心を弾ませながらページをめくりつつ、途中で読み終える事が惜しくなり、後半は章が終わるごとに本を閉じて、次に読むまでの間の余韻をたのしみながら読み終えました。

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