推薦書籍
No.59
『調理場という戦場 「コート・ドール」斉須政雄の仕事論』斉須政雄 幻冬舎
COUNTER BOOKS 井上麻子

まっすぐな、気持ちの良い人間になりたいな。といつも思っている。目標としている人物の一人がこの本の著者であり、2025年2月末に惜しまれつつ閉店したフレンチの名店「コート・ドール」の料理長、斉須政雄さん。
この本には斉須さんが料理人という仕事を追求するなかで、大事にしてきたことが語られている。23歳で渡仏してから働いた6つのレストランと、最後にコート・ドールについて、それぞれ1章ずつ。まるで海外ドラマ。各シーズンで斉須さんは見習い、中堅、オーナーと視点が変わっていくので、読み手によって響く章は違うはず。自分が料理人かどうかは関係ない。どんな世界であれ仕事に向き合う「姿勢」は変わらない。
料理の技術を磨くとともに、斉須さんは思考も研ぎ澄ませてきたのだろう。文中に登場する力のある言葉の節々に感じる。一番心に残ったのは、何度も出てくる「作為のない」という言葉。やりたいからやってきた。自然に楽しんでいたらここまで来ていた。私が目指すのもまさにここだと思っている。
