私のBunkamura文学賞

推薦書籍

No.56

『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』森合正範 講談社

BOOK STAND 若葉台 三田修平

『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』森合正範 講談社

『怪物に出会った日 井上尚弥と闘うということ』は、ボクシング界の怪物・井上尚弥に敗れたボクサーたちの視点で描かれた作品です。圧倒的な才能をもった勝者ではなく、あえて敗者にフォーカスすることで、競技としてのボクシング論にとどまらず非常に濃密な人間ドラマを浮かび上がらせています。本書のなかでも出色の読み応えだったのが井上尚弥のプロ3戦目の相手を務めた佐野友樹のエピソード。紆余曲折がありつつもひたむきに打ち込んだ彼のボクシング人生を追体験したのち、運命的にも思えるタイミングで訪れる怪物との邂逅。衝撃的に面白かったです。書店員としてはスポーツの棚だけでなく文学の棚に面陳したくなる、そんな一冊。

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