私のBunkamura文学賞

推薦書籍

No.51

『和田夏十の言葉』梶谷いこ 誠光社

誠光社 堀部篤史

『和田夏十の言葉』梶谷いこ 誠光社

取引先から聞いた離婚の顛末、新郎をないがしろにする上司のスピーチ、早寝早起きで得たささやかな自由。

誰もが経験しながらも、言葉にせぬまま見過ごしてしまいがちな日常の瑣末事を軽やかに捉え、そこから問題意識の「しっぽ」や、ちょっとした気づきを拾い上げる端的な文章。映画監督市川崑の妻としても知られた脚本家、和田夏十を敬愛する著者が、そのシナリオや随筆からの言葉と、自らのエピソードを重ね合わせながら綴った、パーソナルでありながら、同時に和田夏十という才能の紹介でもある二層構造のエッセイ集。戦後まもない時代から、女性の自立や知性を作品の内外で描いてきた和田夏十をフェミニズムの先駆者として祭り上げるのではなく、現代的感性をもったひとりの先達として捉え、惜しみない敬意が綴られています。

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