私のBunkamura文学賞

推薦書籍

No.49

『文庫旅館で待つ本は』名取佐和子 筑摩書房

有隣堂伊勢佐木町本店 宮尾美貴子

『文庫旅館で待つ本は』名取佐和子 筑摩書房

「凧屋旅館にようこそいらっしゃいました」
昭和初期の古書が揃った文庫を併設した古い旅館には、悩みを抱えた客が訪れる。
恋愛関係、夫婦関係、親子関係…
これだけ聞くとよくあるタイプの話だと思われるかもしれないが、このお話は各話に細い糸のようなつながりがあり、意外な結末を迎える。

何より興味深いのは、若女将の「本が読めない」けれど、「鼻が利く」体質。若女将が客と同じにおいを感じた本を勧め、それを読んだ客は進む道が開けてくる…
夫婦関係に疲れていた女性に優しく言う「でも、だいじょうぶですよ。自分とは必ず仲直りできますから」という言葉を、悩みを感じている全ての人に贈りたい。

30年以上書店員を続けている自分としては、お客様が必要としている本をお勧めできる若女将に憧れはあるが、本が読めなくなるのは辛いので、自分なりに努力しようと思う。

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